ベルギービール

つむじかぜ455号より


「ビールを飲みに行きましょう」ベルギー政府観光局の局長に誘われベルギービール専門の店に行った。私もビールは好きだが、ビールを飲みに行こうとはあまり考えたことがない。

「ドイツには、5000を超えるビールのブランドがあるけれど、実は2種類しかありません。ベルギービールは、作り方も様々でフルーツのかおりがしたり、ハーブを使ったりして種類が一杯あるんです」さすが局長。ベルギーについて語る口調はつい力が入るようだ。

ちょっと調べてみたら、ドイツでは16世紀に「ビール純粋令」が出され、ビールは「大麦」と「ホップ」と「水」以外を原料として使用してはならないということになり、後にこれに酵母が加わるものの、今もその伝統が引き継がれているそうだ。だから、フルーツや糖分、ハーブなどを加えるベルギービールはドイツでは邪道ということになる。

虎ノ門にあるこのベルギービールの店には、沢山のビールがラベルの写真付きでメニューに載っている。どれを選んでいいか分らないから、苦味が強めで味の濃いものをと頼んでみた。白濁したビールが出てきた。250ccで800円程度だから決して安くはない。アルコール度数が9%もあるから、ビールというより発泡性の白ワインのような感じである。

厚くて重いグラスがなかなかいい。底がすこし丸みをおびた三角形で、比較的長い時間冷たいままだ。肝心の味も、しっかりしていて後味も素晴らしい。

そもそも日本で飲まれているビールは下面発酵のラガーが殆どだが、ベルギービールの場合は、上面発酵のエールと自然発酵のランビックが多く、特に、日本でベルギービールといえば、この2種類を指すそうだ。

ブータンにパンダビールという赤いラベルのビールがあるが、あれもきっと上面発酵のエールに違いない。白濁しているが、苦味の中に甘みが感じられ、私は以前から気に入っていた。なるほど、全然違う種類のビールだったのかと改めて合点がいった次第だ。

日本では、若者のビール離れでビールの出荷量が年々減少している。日本の生ビールは美味しいとアジアでは評判だが、ベルギービールを飲んだらビールの概念が変わってしまった。実は、ビールの種類はとても多く、アルコール度数も様々だ。もちろん、味も違う。日本人は、本当に美味しいビールを知らないのかもしれない。

ベルギー人もドイツ人も、とりあえずビールなどということはない。ずっと最後までビールである。お酒も一つの文化である。日本には、どうもビールの文化が根付いていないように改めて感じた。

ベルギービール、美味しいですよ。一度、お試しあれ!

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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