ありがとう「幸館」

*風のメルマガ「つむじかぜ」533号より転載

中野の事務所近くに「幸館」という中華料理屋がある。“しあわせかん”と読む。最近は、中国人が格安の料金でとても庶民的な中華料理店を出すケースがよくあるが、「幸館」もその一つである。

「幸館」は、別名、風の旅行社の「第2会議室」と呼ばれていた。何故なら、弊社の昼休みは12時半から2時半までの間でローテーションが組まれているが、イベントなどの担当メンバーが昼食ローテの時間を合わせて、この「幸館」でミーティングを開いていたからだ。

中華なのに、ランチには食後にコーヒーがつく。1時半からに時間を合わせれば他の客がいない中、殆ど貸切でコーヒーを飲みながら会議ができたというわけである。今は、社内の体制が変更になりそうした会議も減ったようだが、一時期は、それこそみんなが入れ替わり立ち代りランチミーティングをしていた。

そんな「幸館」のフロアーを取り仕切っているのが「さなえさん」である。彼女は、嫌な顔一つせず、快く彼らを迎えてくれた。しかも、決して広い店ではないから「さなえさん」の耳に、いやが上にも弊社の事情が入ってしまう。さぞかし呆れていたに違いない。

さらには、昼に会議をして夜も飲みに行く。とにかく安い。2000円台で十分飲めてしまう。みんなの仕事が終わる時間が揃わないから、先に飲んでいて後で合流などというケースもしばしばある。歓送迎会はもちろん、海外の支店のメンバーが来れば歓迎会も行う。たまには、「幸館」以外に行こうなどという声も出るほどだから、今でも、みんな実によく使っている。

当然のことだが、昼間の会議と違って夜になれば、あれこれプライベートな話も出てくる。かくして「さなえさん」は、プライベートも含めて、誰よりも弊社の裏事情までよく知っているということになったのである。

実は、昨日もあるIT企業の若い社長を囲んでみんなで幸館に行った。「こういう店いいですね。渋谷にはないんですよ」と、華やかなIT業界に似合わない彼の発言が妙に嬉しかった。なんだか身内のことを褒められたような気持ちである。

その「幸館」が6/26閉店する。あまり深入りしても悪いと思い、店を閉じる理由は少ししか聞いていないが、彼女は、腱鞘炎で仕事中も痛みがかなりあってしんどかったそうだ。だからもう続けられないと言っていた。弊社のスタッフは私も含めてそんな事情にはまったく気がつかなかった。大変、申し訳ない思いだ。

それにしても、商売の原点とはなんだろうか。マニュアルどおり動く訓練されたスタッフやおもてなしの心がもてはやされるが、そんな御託を述べたくても「幸館」を見習えばいいとすら感じる。“心が通い合う”それが商売の原点だと私は思う。

本当にお世話になった。スタッフ一同、大感謝である。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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