「むり!絶対むり」からの卒業

*風のメルマガ「つむじかぜ」545号より転載


亜細亜大学のトラベルを専攻する学生14名を連れて9/4(金)からモンゴルへやってきた。3年生12名、2年生2名、男女比は女9男5である。実は、昨年から縁あって亜細亜大学で彼らを教えている。その授業の一環でモンゴルへ来たというわけだ。

どんな授業かというと「デスティネーションマーケッティング」と銘打って、旅行の目的地とする国・地域を如何に旅行商品化して販売するかを、モンゴルを例にとって学ぶというゼミの授業だ。なんのことはない。風の旅行社が行ってきた実践をそのまま授業にしているにすぎないともいえる。

そうはいってもこれが中々そう簡単なものでもない。例えば、トラベル専攻といっても、14名のほとんどは海外旅行の経験は1~2回程度しかなく、なかんずくモンゴルへ来たのはもちろん初めてである。おそらく私の授業をとらなかったらモンゴルへは一生来なかっただろうという学生がほとんどであろう。

だからか実はかなり心配した。実際、最初は、ハエが多いことやトイレが水洗でないことですらかなりの抵抗になった。彼らの表現を借りれば「むり!絶対むり」である。

ある村の学校の柵のペンキ塗りのボランティアとその寄宿舎で一泊二日で子供たちと過ごした時には、外のトイレは一部の女子は使うことができなかった。また寄宿舎で歓迎で出されたホルホグ(今回は山羊の蒸し焼き)には、またまた何人かが「むり!絶対むり」を連発。野性味あふれる料理は味以前の問題であるようだ。

自らモンゴルへ行くことを選択してくださった弊社のお客様からすれば、こんな話をすると、少々呆れてしまうかもしれない。本当に、今の学生たちは生まれたときから清潔かつ安全でソフトな文明の中で育ってきたので、不衛生なことや野生的なことに極めて弱い。

しかも、私が子供のころは、「できない」と「むり」などと自ら口に出すのは恥ずかしいことだったが、今の学生たちは逆である。無理なことをするほうが「格好悪い」ということのようだ。

しかし、これを「情けない」の一言で片付けるのは早計である。「経験がないだけだ」と捉えるほうがずっと前向きになれる。彼らに経験を与えなかったのは、私たち親の世代であり日本の社会である。むしろ私たち年配者のこだわりの強さに比べたら遥かに柔軟性がある。実際、「最初は無理とおもっても結構できた」とほとんどの学生は、終盤はかなり馴染んで平気になってきた。

世界には違った文化や生活があることを知り、自分の常識が全く通じないということを学んだと思う。問題は、ここからだ。その学びを観光産業に昇華させなければならない。自分の好き嫌いを離れて商品化できるか。彼らにとってはハードルの高い課題である。

褒めてばかりではいけない。学生に苦言を一言。環境の変化に自分のほうから壁を作ってしまうことは止めないと、広く世界に出て行くことはできない。何でも挑戦しやってみることが大切である。はじめから「むり!絶対むり」は卒業しないといけない。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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