世界が過熱した2015年

*風のメルマガ「つむじかぜ」560号より転載


ここ2ヶ月ほど、『下町ロケット』を楽しみに日曜日の夜を過ごした。池井戸潤の原作は読んでいたから、今さら、何がそんなに楽しみなのか。自分でも不思議に感じながらテレビの前に釘付けになった。

主人公が中小企業の経営者だから、どうしても、自分と重ねて見てしまう。しかし、であるが故に、“現実はそんなに上手くはいかない”という苦々しい思いもある。そんな場合は、少々腹立たしかったりもする。それでも、どこかに“ああなったらいいなあ”という切望感があるのだろう。あんな会社をつくれたら、あんなに技術者としての誇りをもてたら幸せである。そう思い、そう願いやってはいるが現実は厳しい。

水戸黄門ではないが、勧善懲悪は、自分が正義の側に立っているような心地よい錯覚に導いてくれる。しかも、最後は安堵感が得られる。この単純さが魅力なのかもしれない。現実をそのまま描いたドラマだったら、今の私は、見たいとは思わないだろう。それだけ保守的になったということなのかもしれない。

さて、2015年も余すところ一週間。4月25日にはネパール大地震という大事件があり衝撃の年となった。パリのテロは、2001年の9.11同様、世界を変えてしまった。世界は、今、まさに過熱している。

こんな時勢には、妙な人間が出てくるものだ。その中で最近話題になっているのがトランプ氏である。先週のサンデーモーニングで姜尚中氏が、トランプ氏について解説した。私の混乱した頭の中がすこしスッキリしたので、以下概略をまとめご紹介する。


トランプ氏はデマゴーグである。デマゴーグとは扇動家のこと。例えば、ヒトラーがその典型。その特徴は、一つには、反知性である。ヒトラーの『我が闘争』を読んだが、実に単純ではあるが侮れない。ヒトラーは、「大衆はバカだから虚偽でも一万回繰り返せば真実になる」と言っている。間違ったことでも単純な言葉で繰り返すことでひとつの方向に扇動する。第二の特徴は、「友 / 敵」である。共通の敵をつくる。ヒトラーはユダヤ人。トランプ氏の場合はイスラム教徒を共通の敵にした。三番目の特徴は、プロパガンダである。プロパガンダとは元々「種を撒く」という意味であり、トランプ氏はパリのテロに乗じて不安の種を撒くことで民衆を反イスラムに駆り立てている。こういうことは、過去、様々な国で見られ、今の日本にもあるのではないか。


まさか、こんな人物をリーダーに選ぶほど米国は落ちぶれてはいないだろう。世界が過熱し、激しい感情が覆うようなときは、こうしたデマゴーグが登場してくる。

まさに、2015年を象徴したような現象である。世界のリーダーたちは、ポピュリズムに陥ることなく、冷静な判断をしてほしい。もちろん『下町ロケット』のように単純にはいかないだろうが、安堵感を得たいと誰しもが願っている。

今年も大変お世話になりました。特に、ネパールの支援をして下さった方々には厚く御礼申し上げます。何卒、来年も宜しくお願いいたします。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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