「欧米」、大人の感覚

*風のメルマガ「つむじかぜ」573号より転載

「え?そんなばかな。スティーグ・ラーソンはミレニアムを書き終えた後、すぐに亡くなったはずだが、、、」そう思いながら、会社近くの書店に平積みされた『ミレニアム4』を手にとってみた。なんと、著者が違うではないか。ダヴィド・ラーゲルクランツというスウェーデンの作家である。物語のテイストは、変えておらず、これまたなかなかの評判らしい。

スティーグ・ラーソンの『ミレニアム』3部作は、全世界で累計8,000万部が売れたという。とんでもないベストセラーである。『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』 はハリウッド映画にもなっている。

とにかく、ドラゴン・タトゥーを彫りこんだリスベット・サランデルなる主人公の個性が飛びぬけている。あらゆる既成の価値観を排し自分の基準だけで思考し行動するリスベット・サランデルを好ましく思う人は少ないだろう。私も、こういう個性はどちらかといえば苦手である。しかし、側に寄れば火傷しそうだが、そんな生き方を羨ましいとも思う。

彼女の特殊な能力が、複雑な問題をいとも簡単に解いていく。実に小気味いい。ひとかどの人物たちの内なる姿が透けて見えてしまう。こんなことは、現実世界ではなかなかない。この小説が飽きずに読み進められる要因がここにある。

私は、この3週間ほどを『ミレニアム』3部作で過ごした。その面白さには脱帽した。日本の作家の“普通”の本では物足りなくなってしまうのではないかと心配するほどだ。だから、今、ここにストーリーや構想の面白さを書きたいが、そんなことをしたら、この本をこれから読む方の面白さを半減しかねないから止めておく。

したがってストーリーとは関係ないことを少しだけ書いておこうと思う。私は、スウェーデンに行ったこともないし、スウェーデンの文化や人々の暮らしを余り知らないが、社会保障の整った裕福な北欧の国であり、成熟した大人の国というイメージを持っている。

この小説に登場する人物は、まさに、そのイメージ通り、いずれも独立した個人として存在している。スウェーデンだけじゃなく、欧米全般に言えるのかもしれないが、日本人のどこか互いにもたれ掛かり合いながら暮らしている姿とは、かなり違う。

男女の関係も実にあけっぴろげである。同性婚も2009年には認められているこの国は、その点からも、成熟した大人の社会だと私には映る。もう一人の主人公ミカエル・ブルムクヴィストが繰り広げる男女の関係には、到底日本人には理解できない感覚が存在することを感じる。

すごい世界だと感心もするが、日本人がこういう感覚になるには、後何年かるのだろうか。いや、おそらく年数の問題ではないだろうから、永遠に無理なのかもしれない。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。


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