突然の現金書留

*風のメルマガ「つむじかぜ」621号より転載


あるお客様からお金が現金書留で送られてきた。手紙が同封されていたので読んでみると、なんと1998年に弊社で「ヒマラヤ縦断飛行」いうネパールとチベットへ行くツアーに参加した際に、未払いになっていた分だと書かれていた。

当時、私が直接このお客様とお支払いの件でやり取りをしたのでよく覚えている。銀行振り込みをしていただいたとのことだったが、その振り込みが通帳で確認できず何回か電話でお話した。

本来ならご旅行前にお支払いの確認をするが、何故か確認が漏れて、ご旅行後にお支払いの確認を電話ですることになってしまったのである。お客様は、すっかり支払いは済んでいると思っていらっしゃったので「なんで旅行も終わった今ころになってそんなことを言ってくるんだ」と気分を害された。当然である。こちらの確認漏れを詫びて再度銀行でご確認をしていただくようにお願いしたが、なかなかご納得していただけなかったというわけである。

「旅行代金は、絶対にご旅行前にいただくこと。確認を漏らしたことがいかん。お客様の楽しかった旅の気分を台無しになってしまったことを反省すべし」。そう社内で確認してこの件は終了した。それからしばらくしてご来店くださり一部お支払いしてくださったが、その後はそのままになった。

今回、古希を迎える年になって俄かに思い出されてご送金くださったとのこと。ご自分の人生を“納得いくものにしたい”そんな毅然とした意志を感じ甚だ感服した。今更いただくのもなんだか心苦しいが、ネパールの高山病対策で使う緊急加圧器の代金の一部とさせていただくことにした。

それにつけても、こんな立派な方がいらっしゃるかと思えば「てるみくらぶ」の山田千賀子社長のように詐欺まがいの行為をする人間もいる。たまたま時期が重なったせいかその大きな違いを感じてしまう。

旅行会社は、お客さからお金を預かり、約束した旅行を実施する債務を負う。自分のお金ではない。旅行が終わるまでの預り金である。なのに、お客様から集めた99億円ものお金がなくなってしまったというのである。その上、現地の旅行会社には山のような未払い金をつくり、広告代理店にも4億円の未払い金があるという。いったいお金はどこへ消えてしまったのか。新聞広告にいくら使ったか知らないが、広告費だけで消えるはずがない。

今週の土曜日、(一社)日本旅行業協会とトラベル懇話会で「てるみくらぶ内定者」向けの就職説明会を行うが、60社が一日で名乗りを上げた。旅行業で働こうとする若者を業界で受け入れようということである。簡単には消費者の信頼は取り戻せないが、一歩ずつできることをやるしかない。


★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。


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