浅田真央の引退

*風のメルマガ「つむじかぜ」622号より転載


「まだまだやれる。もっとやってほしい」。そんな声が浅田真央には寄せられる。同時に、「ご苦労様。ゆっくり休んでください」。という声も聞こえてくる。誰しもが、ここ何年かの浅田選手の演技姿を心配しながら見ていたに違いない。私もその一人である。本人が一番辛かったと思うが、観ている方も痛々しさを感じ辛かった。

それにしても、26歳で引退とは、なんとも若すぎる。とはいえ、世界のトップアスリートとして10年以上活躍してきのだから、彼女自身にとって年齢は関係なかろう。5歳でスケートリンクに上がったというから、数えたら20年を超える。十分長い間頑張ってきた。

26歳という年齢は、通常、大卒ならば社会人になってようやく仕事にも慣れてきて、少し社会人らしくなってくるくらいの年齢である。到底、「やりきった、悔いはない。スケートは人生。」などという言葉は出てこない。

2006年のトリノオリンピックに年齢制限で出場できなかったが、当時の浅田選手は何の迷いもなく宙を舞い躍動していた。ところがフィギアスケートは、年齢を重ねるとジャンプが飛べなくなるというから厄介だ。女性の場合は体型が変わるということもあるのだろうが、体験が次第に邪魔をするようになる。15歳のころの浅田選手は、怖いなどと思ったことはなかろう。経験は、怖さを知ることでもある。

ゴルフでは、「イップス」という“病”がある。特にパッティングで多い。世界の名選手がこれで何人も引退に追い込まれている。「イップス」とはパットが入らなくなるという不調のことではない。重症になると、手が動かなくなってパットができなくなるのである。私の勝手な見方だが、浅田選手もそんな状態だったように思う。

なんとかしようともがけばもがくほど事態は悪化していく。体と心は一体になって動く。バラバラになったら、体は思うように動かない。もちろん高いレベルで競い合うトップアスリートだから「イップス」になる。普通の人には起きない現象である。

フィギアスケートというスポーツはジャンプの出来が勝敗を決める。何故だろう。もっと美しさとかエレガントさとかそういうもので審査できないのかと思うが、それでは主観が入りすぎるからか、ジャンプの難度や出来栄えで細かく点数を決めて、優劣を競い合っているように思える。

競技引退後、ショーの世界で活躍する選手たちを見ると、実に伸び伸びと楽しく滑っているように見える。浅田真央は、きっとこれから様々な場で活躍するに違いない。今、元マラソン日本代表の増田明美がNHKの朝ドラのナレーションに起用されているが、マラソン選手だった時以上に引退後は活躍している。ゆっくり静養し、新しい人生を見つけてほしいものである。


★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。


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