危惧

*風のメルマガ「つむじかぜ」624号より転載


Xday といわれた4月25日、私は、朝から緊張しながら時間を過ごした。GWを前にして米国の武力行使が開始されたら大変なことになる。目的地が韓国でなくとも、海外旅行へいく心情ではなくなるだろう。私ども旅行会社は、こういう問題が生じると、まずは、海外にいるお客様をどうやって安全に日本に戻すかという課題にも直面する。それなりのシミュレーションをしてみる。

戦争ではないが、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)禍の時はGW前に流行が急拡大しチベットへのツアーをストップした。一昨年のネパール大地震も、4月25日に発生し、GWのネパールランタントレッキングツアーなどを中止した。

GWにはこういう大変な事態が起きるというイメージがあったので、今回もかと不安が募った。もちろん、まだ大丈夫というわけではない。米軍の異様なまでの朝鮮半島への部隊派遣を見るとまだまだ安心はできない。

「危機に遭遇しても自分だけは助かる」。そう思っている人が多い。こんな平和な日常が、ミサイルで破壊されるなんて想像できない。仮にそんなことが起きても自分は助かる。そんな感覚がどこかにある。危険なことから逃れようとするのは人間の本能でもある。実際、私が教える学生たちに今の事態を問うても、「ミサイルなんか飛んでこないと思う」と根拠がないまま答える者が多い。

中には「問題が大きすぎて到底考えられない。私には関係ないような気すらしてくる」。そう答えた学生もいる。なるほど、この感覚に共感する人も多かろう。いくら理屈では解っていても、事態が大きすぎて考えても仕方ない。雲の上の出来事だと思えてしまう。これも逃避行動の一つかもしれないが無理からぬことである。

そんな学生たちに、先月、文科省が公示した「中学校学習指導要領」に「銃剣道」が新しく入ったがどう思うか聞いてみた。最近の学生は、新聞も読まないしテレビも見ないからニュースも見ていない。社会でなにが起きているかほとんど知らない。
だから、この話題も当然知らなかったが、そもそも「銃剣道」そのものの存在すら知らない。

まずは、銃剣を説明し感想を聞いたが、「なんで?」と彼らの頭の中では疑問符しか浮かんでこなかったようである。私自身、銃剣は知っていても「銃剣道」なる武道があることを知らなかったし、それが、自衛隊で今も行われているということに思いが及ばなかった。

大きな危機も、戦争すらもある日突然やってきたと感じるのだろう。しかし、実際には事態はジワジワと進んでいき起こるべくして起こる。米国の大統領が代わって一挙に雲行きが怪しくなってきた。もう事態はかなり進んでいるのかもしれないが、危惧は危惧で終わってほしいと願う。


★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。


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