タカタ経営破綻

*風のメルマガ「つむじかぜ」632号より転載

6月26日、タカタが経営破綻した。しばらく前から、エアバッグの異常破裂による事故でリコールが度々ニュースとなり、米国でも死者が何人も出ていたから、訴訟にもなるだろうし、経営は大丈夫なのだろうかと気になっていた。危惧は的中し案の定の結果になってしまった。

一兆円を超えるリコール費用がかかると報じられてもタカタは何故破綻しないのか。
そんな高額でも、保険で補償されるのだろうかと疑問に思っていたが、なんと、7000万個以上のリコール費用は、タカタ製品を搭載した自動車メーカー10社が、すべて立て替えて来たのだそうだ。

各自動車メーカーは、第一次責任を取って自動車メーカーの負担でリコールを実施しその費用をタカタに求償するはずだったが、倒産で求償することは叶わなくなったという訳だ。

しかし、既に貸倒引当金を計上していた自動車メーカーもあって、自動車メーカーにとっては、倒産の影響は軽微だと言われている。私には、金額がでかすぎて、どうしてそんなことができるのか不思議で仕方ないが、自動車産業とはそういうことも織り込み済みの経営をしているということなのだろう。

そもそも、何故、こんなことになってしまったのか。製品が高度化すればするほど欠陥の発生も増えており、自動車に限らず製品のリコールは年々増えている。しかし、リコール保険もあり、問題が発覚したら早期に対応すれば決して倒産するまでの事態にはならなかったはずだ。

しかし、タカタは、2004年には、欠陥に気付いていながら隠蔽し製造を続け、2009年にアメリカで死者が出たが、その後も対応が遅れ事態をどんどん悪化させてしまった。

日本では、リコールに気付かず申し出をしなかった人でも、車検制度があるのでリコールがほぼ確実に実施されていくが、米国ではこれがないので、リコール実施率が低く、欠陥を抱えたまま使用されている車がまだあるという。したがって、今後も事故が起きる可能性があるのだ。

もし、タカタが破産し事業が継続できなくなれば、リコール用の部品も供給されなくなってしまう。だからだろう、民事再生法という形で事業継続が図られる。会社更生法と違って、管財人ではなく、経営者がそのまま再建にあたるわけだが、今後もリコール を実施していく責任があることを強く自覚してほしい。

経営者として都合の悪い事態を隠したい、隠しているうちに何とかして、欠陥などなかったことにしたい。そう思うのかもしれないが、もちろんそうあってはならない。
自戒の念を込めて自らの心にそのことを叩き込んでおこうと思う。


★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。


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