サイフォンの理由

*風のメルマガ「つむじかぜ」631号より転載

高田馬場のBIGBOXに「VIE DE FRANCE CAFE」というイートインのパン屋さんがある。結構あちらこちらで見るチェーン店である。以前、何回か利用したことがあり、先日、時間調整で久々に立ち寄った。

コーヒーを頼んだら、「お呼びしますので番号札をお持ちください」と17番の札を渡された。2分くらいするとコーヒーが出来上がって呼ばれた。なんと、コーヒーをサイフォンで一人ずつ入れてくれるのである。値段は247円。5枚のコーヒー券が1200円である。

以前利用した時は、既に入れてから何分、下手をすると一時間ぐらいたったようなすっかり香りが飛んでしまったコーヒーだった。確か、紙のコップを使っていたように思う。今だって、そういう店が一般的だろう。200円くらいのコーヒーに美味しさを求めることなど、土台無理だと私も思う。

サイフォンで入れてくれたコーヒーは、底に向かって細くなる三角形の白いコーヒーカップにいれられて渡された。澄んだ飴色が白いカップの中で心地よさそうだ。もちろん、美味しい。通常、サイフォンでコーヒーを入れてくれるような店は、一杯500円くらいはするし、気軽なカフェなどではなく「〇〇珈琲」などといった専門店で出されるイメージだったが、それを見事に覆された。

しかし、BIGBOXの一階にあり、かなりのお客様が入っている。おいしいコーヒーを出すサービスは素晴らしいが、サイフォンで一人ずつ入れていたら時間がかかって、逆に、お客様からお叱りを受けるのではないかと老婆心ながら心配になった。

ところが観察していると、少し理由が分かってきた。お客様の中でコーヒーを頼む人は意外と少ないのだ。シーズンがら冷たいものを頼む人が多い。その上、飲み物のメニューもかなり多種多様になっている。4台並んだサイフォンは、私の心配などどこ吹く風であまり稼働していなかった。

お客様のニーズはどこにあるのか。ちょっとした工夫で新しいマーケットを見つけ出すことができる。今やっていることを当然と思わず見直す。できないではなく、できる方法を考える。何も新しい理屈ではない。極めて基本的なことである。どこでも美味しいコーヒーが飲めたら嬉しい話である。


★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。


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