インドで興った仏教は、一方では中国を経由して日本へ伝えられ、他方ではヒマラヤを越えてチベットへ伝播しました。この講座では、(1)インド、(2)チベット、(3)日本のいずれの地域においても人気を博した仏様を選び、それら各々の姿や信仰形態の変遷を、三つの地域を比較しながら学びます。前6回の好評につき、今回はその続編です。
《配信形式》ZOOM 見逃し配信も予定しています
《参加費》3,300円/回 全5回一括申込の場合:15,000円
《各講座の内容》
第1回 大悲の明王・不動
不動明王は、地蔵菩薩、観音菩薩と並んで、日本で最もポピュラーな尊格です。如来の〝使者〟として衆生の救済に奔走するため奴隷の姿をしているなど、19の身体的特徴(十九相)をそなえているとされます。この講義では、その19の特徴を一つひとつ確認しながら、不動明王の図像の特徴を学びます。また、不動明王を中心とする、五大明王、八大明王などの尊格グループについても紹介します。
第2回 悟りの仏・釈迦
仏教で信仰されるたくさんの尊格の中で唯一、実在した歴史上の人物である釈迦如来。インドでは数多くの伝記(仏伝)が著述され、その伝記に基づいて多様な仏像が作られました。この講義では、①誕生、②降魔成道、③初転法輪、④獼猴奉蜜(みこうほうみつ)、⑤三道宝階降下、⑥舎衛城の神変、⑦酔象調伏、⑧入涅槃の〝仏伝八相〟を中心に、インドに遺る実際の作例を見ながら、その表現の方法を解説します。
第3回 性愛の明王・愛染
恋愛成就を祈る密教修法の本尊とされる愛染明王は、真っ赤な身体で日輪(太陽)の中に坐し、西洋のキューピッドや、ヒンドゥー教のカーマ神と同じく弓と矢を持つ特異な姿をしています。しかし、愛染明王はインドにはなく、中国で成立した『瑜祇経(ゆぎきょう)』という経典にのみ説かれています。この講義では、愛染明王の前身となったと思われるいくつかの尊格をインドに求めながら、この明王の成立の謎に迫ります。
第4回 癒しの仏・薬師
薬師如来は、読んで字のごとく病を癒す仏で、宇宙のはるか東方にある浄瑠璃世界に住むとされています。日本では古くから信仰を集め、脇侍の日光菩薩と月光菩薩、さらに十二神将を従えた作例も多く遺されています。また、七体の薬師如来を集合させた〝七仏薬師〟は、チベットでは「薬師の七兄弟」として親しまれています。
薬師如来とその眷属が一堂に会した、チベットの薬師曼荼羅についても紹介したいと思います。
第5回 破壊と福徳の神・大黒
商売繁盛の神として知られ、七福神にも含まれる大黒天。本来は、ヒンドゥー教の主要神であるシヴァの怒れる姿=バイラヴァを起源とする尊格です。チベットでは、仏法や僧院を守護する護法神として「ゴンカン」と呼ばれるお堂に祀られています。いっぽう日本では、大国主命(おおくにぬしのみこと)と習合して福の神となりました。恐ろしいバイラヴァが、福の神へと変貌していった過程をたどってみたいと思います。
現役住職にして仏教美術研究家
川﨑 一洋 (かわさき かずひろ)
昭和49年、岡山県生まれ。高野山大学博士課程修了。博士(密教学)。現在、高野山大学特任教授、四国八十八ヶ所霊場第二十八番・大日寺住職。密教の曼荼羅を中心に、アジア各地の仏教美術、仏教儀礼を研究。ネパールやチベットの各地でフィールドワークを重ねる。
著書:『四国「弘法大師の霊跡」巡り』(セルバ出版)、『弘法大師空海に出会う』(岩波新書)
共著:インド後期密教(上)(春秋社) 第1章担当
インド後期密教(下)(春秋社) 第6章担当
2024/08/27(火)
2024/11/04(月・祝)