“青の街” シャウエンの魅力

青の街シャウエンの日常」風景 青の街シャウエンの日常風景

北モロッコを訪れる旅人に人気の街・シャウエン。
正式名称は「シェフシャウエン(Chefchaouen)」ですが、モロッコ人も省略して「シャウエン」と呼ぶことが多いようです。

歴史や自然の多様さが魅力の一つであるモロッコにおいても独特の雰囲気を放ち、近年雑誌やテレビなどでも話題になりつつある、通称“青の街”の魅力をご紹介します。

 

“青の街”を彷徨う


メディナ(奥)は遠くからも青く見える
メディナ(奥)は遠くからも青く見える

礫地ばかりで荒涼としていた車窓風景が、緑濃い針葉樹や樫の森へと変化すると、いよいよ小高いリフ山脈の中腹に位置するシャウエンが近づいてきます。しかし、スペインのアンダルシア地方から逃れたムスリムの隠れ里として発展したこの街は、かなり近くまで寄らないとその全容を見せてくれません。急カーブを越えると突然視界が開ける様はドラマチックでもあります。

白い壁と茶色のテラコッタで葺かれた屋根は、アンダルシア地方の建物を彷彿とさせますが、建物や通路はブルーを基調とした色でペイントされており、“青の街”という名の由来になっています。イスラム建築の特徴として、建物の外部に庭を作らない点が挙げられますが、そのせいもあって一種独特の生活感のなさを感じられます。迷路のように入り組んだメディナ(旧市街)では、角を曲がったら通行人が誰一人いないという瞬間があり、狭く青い世界に自分だけが取り残されてしまったかのような、非日常の感覚を味わうことができます。

メディナの中の水飲み場 メディナの中の水飲み場も青

 

そもそも、この街はなぜ青いのでしょうか? ガイドブック等の情報によると、「青がイスラムの神聖な色だから」だとか、「虫除けのため」だとか、「強い日ざしで家の中がまぶしくならないようにするため」だとか諸説入り乱れているようですが、シャウエン産まれシャウエン育ち、日本滞在17年、現在シャウエン在住のサイードさんに尋ねたところ、「もともとこの辺の石灰岩は青みがかっているんだよ」という、(ロマンを感じられない)説を教えてくれました。うーん。なるほど。。。 由来はどうであれ、現在の住民もこの色を大切にしているようで、私が滞在した際も家の前を刷毛でペイントする女性達の姿を見ることができました。観光客からすれば、単純に、青い街は素敵です。

青以外にも様々な色の塗料が

青以外にも様々な色の塗料が

子供やお年寄りも多い

子供やお年寄りも多い

 

メディナはくねくねして分かり辛いものの、街の規模が小さいため、道が分からなくなっても本当に迷子になってしまうことは考えにくいです。フリータイムの時間があれば、ぜひ買い物や周辺散策を堪能してください。なお、道を尋ねるときは、中心部にある要塞跡「カスバ」がどこか確認すると分かりやすいです。風の旅行社では、カスバからも近く便利な「リアド」への宿泊がスタンダードです。

宿泊した雰囲気抜群のリアド(一例)

宿泊した雰囲気抜群のリアド(一例)

スーツケースは軽自動車が運びます

スーツケースは軽自動車が運びます

日中も時間帯によって青色が変化します 日中も時間帯によって青色が変化します

 

“青”以外の魅力


シャウエンの魅力として、そこに住む人の気質についても語らないわけにはいきません。一般的に旅行者に優しいといわれるイスラムの人々ですが、特にシャウエンはフレンドリーな人が多い印象です。コーラを買っただけで、「トーキョー! ナゴヤ! テイクフォト!」ということで、肩を組んで記念写真を撮ってくれたお兄さんや、道を聞いたらわざわざ目的地まで一緒に歩いてくれたおじいさん、ボールを蹴り返すと目を輝かして一緒に遊んでくれた子供達など、忘れられない出会いに溢れていました。商店の物売りもしつこくないので、お土産を購入される方もゆっくり品定めをすることができます。

お勧めのお土産は布地

お勧めのお土産は布地

Tシャツがスペイン語なのがそれっぽい

Tシャツがスペイン語なのがそれっぽい

 

シャウエンでは週2回 “山の人”ことベルベル人達の市場が開催され、買い物客や行商人でとても賑わいます。女性は家に篭ることが多いと考えがちなイスラム圏ですが、ここではむしろ大活躍。大きな荷物を背に、北モロッコ独自のカラフルな民族衣装やストローハットを着用したおばちゃん達が、おしゃべりをしながら大通りを闊歩する光景はなかなか壮観です。ちなみに、シャウエンの人は肌が白く、美人が多い事でも有名だそうです。言われてみれば、昔はさぞや…?

美人が沢山。後姿ですみません

美人が沢山。後姿ですみません

足の早い青魚も新鮮そのもの

足の早い青魚も新鮮そのもの

 

旅行の大きな楽しみである食事。ここシャウエンでは、山で採れる野菜と、近郊の海から運ばれる新鮮な魚のコラボレーションが楽しめます。冷涼な水が噴き出すモロッコ屈指の名水地であるという事も、料理の味をちょっと違うものにしている秘密なのかもしれません。前述のサイードさんがオーナーの「バブスール」というお店で昼食をいただいたところ、地粉を使った釜焼きパンや、良い具合で漬かっているオリーブ、味の濃い野菜が盛りだくさんのモロカンサラダやナスのオリーブオイル煮、歯ごたえのある地鶏のタジンや、山菜を使った炒め物、そして名物のソラマメのポタージュ「ビソラ」とイワシやマグロのタジン・・・本当にどれもこれも絶品でした。密かに、今までモロッコで口にした物の中で一番美味しかったのではないかとまで考えています。

夢中で食べてしまい、良い写真がありません

夢中で食べてしまい、良い写真がありません

メディナ上部から滝のように噴出する水

メディナ上部から滝のように噴出する水

 

モロッコにあった理想郷


モロッコ支店のラシッドは、「シャウエンには、昔のモロッコのような素朴さが残っていてホッとする。」といいます。また、日本滞在が長かったサイードさんも、「いろいろ見たけど、やっぱりここに戻ってこれて良かったね。」と話していました。今やモロッコ人だけでなく、世界各国の旅人からも愛されるシャウエン。親切な人々、美しい自然、美味しい水や料理、綺麗な女性、そしてのんびりした空気感-。ここには黄金や宝石こそ溢れていませんが、かつてスペインが南米大陸まで追い求めた理想郷・エルドラドは、存外海を渡ってすぐそばにあったのかもしれません。

夜はまた違った雰囲気です。 夜はまた違った雰囲気です。

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