現地とのつながりを大切に

現地と一体となったツアー作り

「わたしたちは、現地とのつながりを大切にして手作りの旅をお届けします」弊社のホームページには、会社名の下にこう記されています。
私は昨年の3月から、ネパール、タイ、モンゴル、モロッコ、青海省、チベット、ペルーを、それぞれ一週間ほどの期間をかけて訪れてきました。この号が出る頃にはウルムチに行きます。ご存知のように、弊社はこれらの国・地域に支店あるいは提携会社を設け、現地と一体となったツアー作りをしています。

海外支店・提携会社の取り組みは様々

弊社の各支店あるいは提携会社の組織、やり方は実に様々です。
ネパールは弊社の支店の中では一番歴史がありますが、プリスビーという温厚で思慮分別を備え大変力のある社長がスタッフを掌握しています。ネパールは周知の通り、政治的な混乱が続いたためにお客様が激減し、平穏を取り戻した現在も大変苦労しています。それでもスタッフを減らすことなく支店が維持されています。プリスビーがスタッフに現状をよく理解させ、みんなで耐えしのぶチームワークを作り上げたことで初めて可能だったのだと思います。
ブータンも、シンゲという頼もしいリーダーがいて、クオリティーの高さを維持しています。ブータンには英語以外のガイドが少なく育成機関もないから、日本語ガイドの確保が一番の悩みです。一部の高級ホテルでは桁外れに高い報酬を払っているので、ガイドの引き抜き合戦はますます激しくなっています。それでも風のやり方を理解したガイドを育てます、とはっきりとした口調で話していました。
モンゴルは、どうしても夏に仕事が集中してしまうので、ガイドが生業として成り立たず苦労していますが、社長のハグワは、ドライバーや、弊社直営キャンプ「ほしのいえ」「そらのいえ」のコック、乗馬スタッフなど様々な業種のスタッフを抱えその調和を取っています。10月にモンゴルを訪れた際には、「冬はスタッフの仕事が少ないから参ります。何とか冬にも安定して仕事ができないか模索しているんです」そんな風に漏らしていました。
チベットは、スタッフの篤い尊敬を集めている社長のトゥプテンが、スタッフをその懐に包み込むような素晴らしい組織を作っています。事務所の一部をスタッフルームとして貸し出したり、日本語教室に通わせたりと、まるでひとつの家族のようです。
モロッコは、昔からの幼馴染が集まって、みんなでガイドの仕事を楽しんでいます。皆、敬虔なイスラム教徒なので、1日5回の礼拝は欠かさないし、オレンジジュースで談笑しています。仲がいい分、強いリーダーがいないから少々心配ですが、一所懸命やる彼らの姿に心打たれます。もし色々と問題が出てくれば、それは彼ら自身で乗り越えていくしかありません。きっと彼らなら出来ると私は思います。

ペルー支店は弊社では唯一、日本人の篠田直子が経営しています。14年ぶりの大雨で3ヶ月マチュピチュに行けなくなりましたが、 彼女は、「山あり谷ありですよ。まるでジェットコースターに乗っているみたいです」と、苦節30年の日々を思い出し、「でも、ヘリコプターでマチュピチュの観光をするようなことはやめましょう」と言います。ヘリで高いお金を払ってもマチュピチュには30分ぐらいしかいられないし、今だってヘリのためにコンドルが居なくなったと問題になっているので、そんなツアーはやりたくないという訳です。ペルーが大好きな篠田らしい言葉です。
シルクロードは、ご存知のように、新疆ウイグル自治区が民族問題に揺れ、外務省からは「渡航の延期をお勧めします」という危険情報が出たままです。しかし、ようやく国際電話が通じるようになりツアーが再開できる可能性が出てきました。(2010年2月現在) 現地の提携会社は既に事務所を閉じてじっと耐えています。私自身が訪れてまずは彼らを元気付け、何とか再開の道を探って来たいと思います。

いい旅を作るためのリスクと選択

私は同業者から、「何でそんな面倒なことをやるの? 現地の会社の経営まで口出したら大変だよ。手配の依頼だけにとどめ、組織がだめになったら他の会社を使えばいい。コストもその方が安く済む」そんなことをよく言われます。
確かに、そうかもしれません。第一、弊社のようなことをすれば、販売が不調な場合は現地の維持コストが大きな負担になります。そんなリスクは抱え込まないようにするのが賢い会社経営です。ただ、そうなれば弊社の存在意義を自ら放棄するようなものです。お客様が弊社のツアーを買う理由もなくなります。リスクは回避できても、売るものがなくなります。
嘗て旅行会社は、どんな大手も現地に自ら乗り込んで現地事務所を開き、そこを拠点に仕事をしたそうです。某大手旅行会社のヨーロッパ駐在をされていた方に昔のお話を伺うと、今弊社がやっていることとよく似ています。いい旅を自分で作ろうとすれば自然とそうなります。少々苦労はありますが、私は彼らと一緒に仕事をするのが大好きだし、お客様が現地のスタッフやガイドを褒めてくださることを何よりも嬉しく思います。結果、お客様に心底喜んでいただけるなら、今後もリスクを恐れることなくやっていこうと思います。

※風通信No39(2010年3月発行)より転載

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