2年半におよぶコロナ禍を振り返って

2年半ぶりに海外旅行パンフ『風の季節便』をお届けします。今回は国内旅行との合冊になりました。あまりの感慨深さに体の芯が震えます。応援をしてくださった皆様に心より御礼申し上げます。

今になって思えば当たり前のことですが、収束までに最低でも3年はかかるというのが感染症の歴史的事実です。しかし、21世紀の科学をもってすれば、長くても1年程度で収束するに違いない、と当初は根拠のない妄信にすがってしまいました。やはり、正常性バイアスがかかっていたのだと思います。しかし、その妄信とバイアスのお陰で「大丈夫だ、1年くらいなら何とかなる」と慌てずに対応できた結果、雇調金の特例延長や支援金支給なども重なり、何とか今日までやってこられました。
とはいえ、スタッフたちの生活は一変しました。当初は、“今のうちに稼いでおけ”と号令し副業を許可したものの、どうなることかと心配しましたが取り越し苦労でした。工事現場の交通誘導員、ワクチン接種などのコールセンター職員、メーカーの事務員、デパ地下の食品販売員、グランピング場のスタッフ、フィットネスクラブの受付などですが、中には、しらす漁をしている漁師のもとで働き始めたスタッフもいました。まだ副業は続いています。精神的な負担は計り知れません。早く、元に戻りたいものです。

コロナ禍になって、俄かにリモートが身近になりました。使ったこともなかったZoomを使うようになり、大阪支店のメンバーや海外スタッフとも容易にリモート会議ができるようになりました。コロナも悪いことばかりではありません。
一方、テレワークは世界中で定着するかに見えましたが、コミュニケーションが十分に取れないという理由でオフィスワークへの回帰が起こっています。米国では、テレワークではイノベーションが生まれないという指摘もされています。日本でも、テレワークを減らしている企業が続出しています。会社としての一体感が保てないというのがその理由です。組織で動くことを重視する日本の企業らしい理由です。
また、マイクロツーリズムも提唱されました。コロナの拡大で県境をまたいで移動できないから、仕方なく近場に旅行するしかないのに、これからの旅行の仕方はこれだといわんばかりに、急に声高に唱え始められたことに深い違和感を覚えました。
はるばる遠く世界の各地へ出かけ、多くの時間を費やし、非日常感に浸ることで、一生の思い出になるような旅と同列に比較などできません。コロナで、こうした旅は一旦中断されましたが、普遍の価値を有しています。弊社はそういう旅をしていただくことを仕事にしてきました。これからもそうありたいと思います。

私生活にも大きな変化がありました。5歳のころに家にTVが入り、以来60年以上生活の一部だったTVをほとんど見なくなったことです。コロナ突入当初は、当然のように情報源をTVに求めました。しかし、欧米が脱コロナに政策転換しているのに、日本の専門家と官僚はゼロコロナ政策の提唱を止めず、政府は、国内の行動制限と鎖国に等しい水際対策をとり続けてきました。テレビを見れば見るほど憤りと諦念だけが残りました。にも拘らず、雇調金や支援金を、頭を下げて政府にお願いしなければならない自分の立場に大きな疑問を感じTVを見ることを止めました。今は、目の前の自分のすべきことをするのみです。
TVの代わりにFire TV Stickを使って映画やYouTubeを見るようになりました。私ですらそうなのですから、チューナレスのTVが売れるのは当然かもしれません。しかし、これは久々の歴史的転換かもしれません。TVこそが日本人の常識の画一化の要因でしたが、江戸や明治の人々が大変個性的だったように、日本も再び多様な価値観を持った個性豊かな人間で溢れる可能性が出てきたからです。楽しみでもあり不安でもあります。
まだ、コロナ禍は続きますが、やっと再スタートを切ることができました。これからも、どうぞ宜しくお願いいたします。


※風の季節便 vol.19より転載

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