知床の流氷がもたらすもの

つむじかぜ153号より


“知床の流氷が、知床の海を豊かにしている!”
何故かご存知でしょうか。

遠くアムール川の淡水がオホーツク海に流れ込み、塩分の薄い層を作り、それが、シベリアおろしで氷結し流氷となってやってきます。流氷には、ブラインといって塩分濃度の高い海水が閉じ込められています。それが、知床に漂着してから溶け出すと、深く沈みこみ、これに変わって、植物プランクトンにとって必要なケイ素などの無機塩類を多く含んだ海水が昇って来るんだそうです。春には、植物プランクトンが大量に発生し、それに伴って動物プランクトンも増え、豊穣な知床の海が生まれるという仕組みです。
(『知床自然観察ガイド』財団法人知床財団著 山と渓谷社発行参照)

知床の漁師たちは、“そんなちまちました食べ方をするな”と言って、蟹の実がざくっと取れる美味しいところしか食べないそうです。なんとも羨ましい!そもそも、漁にしても、金になるものしか取らない。逆に言えば、金になる魚が獲れる。ということです。知床の漁師は、若い後継者が今でもどんどん生まれているそうです。健全ですね。

そんな流氷の恵みが、最近は、ちょっと怪しくなってきました。そう、温暖化の影響で、いつまで流氷が来るのか不安視されているのです。流氷は、現在は、一月下旬ごろにやってきます。漁師たちが、冬の間は漁ができないから、この時期を利用して、「流氷ウォーク」をやっています。防水のドライスーツを着て流氷の上を歩き、時には、氷の割れ目から海水に入るそうです。今、知床では、とても人気のある冬のアクティビティーになっています。

先日、知床にお邪魔した際に流氷ウォークをやっている「マリンエンタープライズプロジェクト知床」代表の高木規好氏にお会いしました。彼曰く、流氷ウォークとは、「知床の漁師がプライドを賭けて贈る究極のプログラム」だそうです。なんともまあ、彼らの心意気が伝わってくる熱いメッセージですね。流氷も溶けそうです。やっぱり、冬の知床は魅力的です。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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