総合診療という言葉から

つむじかぜ259号より


 先週、高校の在京同窓会に参加してきました。総会終了後、二年先輩の池田修一氏(信州大学医学部教授)の記念講演がありました。私は、氏のことは存じ上げませんでしたが、アルツハイマー病の原因とも言われているアミロイドーシスの研究などをされていて、遺伝性の疾患を、生体肝移植によって治療する方法を確立し大変注目されている方だそうです。

その池田教授のお話の中で、とても印象的だったことは、「総合診療」という言葉でした。昔は、内科、外科といった大きな分類でしたが、現在は、腎臓内科、肝臓内科、神経内科などと細分化され、医師が患者の体をトータルで捉えることが出来なくなっているそうです。しかも、CTなどの画像診断が進み、医師は、臓器を診ても患者さんの全身を診ないそんなケースが増えているそうです。

信州大学のHPに掲載されている第三内科の冒頭の挨拶で池田教授が、以下のようにお書きになっています。「良い内科医とは、専門性に係わらず、患者さんの有する全身臓器の障害を適確に診断して、個々の病態に応じた治療ができることを意味します。」

「え?医師が、患者を体全体で診るなんて当然のことではないのか。」と、私は少々疑問に感じましたが、最近は、技術の進歩が、人間の総合力を無意味化していると感じることが大変増えてきましたから、医師の世界もそうなのかと思わざるをえませんでした。

同年代の池田教授に、心からエールを送りつつ、自分は、何をしているのかと多少自責の念に駆られながら帰ってきました。

今回で、このコーナーも100回目だそうです。今後も、お付き合いの程、宜しくお願いいたします。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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