商店街の小さな商店

つむじかぜ277号より


通勤途上にある西武線のA駅近くにラーメン屋が出来た。いつ覗いてもがらがらだ。店をやっていると、お客さんが入らず暇なことくらい疲れることはない。時間はなかなか経たないし一日がとても長く感じる。逆に、食事も取れないほど忙しいと大変だと思われるかもしれないが、遥かに楽である。夢中になって仕事をしていれば一日があっという間に終わる。このラーメン屋の従業員も、ぽつねんとカウンターの奥に座っている。もし、彼が自分で始めた店なら、胃が痛いに違いない。

私なら、あの場所には店は出さない。今まで、次々と店が出たが半年くらいで消えていく。そんなことも調べなかったのだろうか。商店街には、路地一本違うだけで、ブラックホールみたいな「お客様の入らない場所」というのがある。そんな場所は、家賃が破格だからつい安さに「ちょっと条件は悪いが、頑張れば大丈夫だろう」と勝手に思い込んでしまう。

昔、私が学生だったころ、知り合いがカレー屋を出した。彼は、初めて行ったインド旅行で、すっかりインドのカレーに魅せられ、脱サラして板橋区でカレー屋を始めた。資金が足りないので節約し、商店街の裏筋の大通り沿いを選んだ。商店街から脇に入る路地なら商店街から見えるから、看板一つで誘客できるが、裏筋になると、店の存在すらわからない。商店街のすぐ近くだから大丈夫だ、と思うかもしれないが雲泥の差がある。

こういう小さな商店は、みんな個人の商店主が頑張って出している。店を出して半年でおよその結果が出る。失敗すれば借金が残る。今、小さな商店は、どんどん大型チェーン店のフランチャイズに取って代わられ激減している。チェーン店のマーケッティングになんか負けないで頑張ってほしいが、商売のいろはをもっと勉強しなきゃあかんよ!と思ってしまう。もし、味もよくなかったらなんだか悲しいが、今度、食べに行ってみようと思う。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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