赤とんぼ

つむじかぜ307号より


小学生のころは、捕中網をもって家の裏手の畑などに行っては、蝶やトンボ、セミなどをよく捕りました。私くらいの年齢の方なら、そんな経験がおありかと思います。私にとっては、夏休みの宿題で標本にしなくてはいけない、などという目的などなくても、日常的に何時もやっていた「一人遊び」のメニューの一つでした。

モンシロチョウやキチョウ、シジミチョウなどは、何処にでもいるので見つけても嬉しくありませんが、アゲハチョウなどを見つけると必死になって追いかけました。トンボも、シオカラトンボは少し珍しく、オニヤンマなどは見つけたら胸が高鳴るくらい興奮しましした。『赤とんぼ』は、季節によりますが、数が多くて簡単に採れる虫の一つでした。しかし、トンボは、虫かごに入れると、たちまち羽がボロボロになって直ぐ死んでしまうので、あまり捕りませんでした。

ところで、『何故、赤とんぼは赤くないんだろう』という疑問を持ったことはありませんか。これが、私の子供の頃の大きな疑問でした。皆さんは、ご存知かと思いますが『赤とんぼ』というトンボはいないそうで、一般的には、アキアカネのことを指します。

アキアカネは5〜6月に孵化してしばらくは里で過ごし、夏になると山に移動し、秋になるとまた里に降りてくるのだそうです。そのときに、大きな群れをなすので、秋のトンボというイメージが強いのだそうです。今年は、秋が殆どなく、『赤とんぼ』はどうしているのかと心配になるほどです。

アキアカネにとって、秋は交尾の季節です。このときオスは、胴体を真っ赤にします。私に言わせれば、これこそ『赤とんぼ』です。ですから、橙色のアキアカネは、『赤とんぼ』ではないと、私はずっと思っていました。今でも、私の中ではそうなのです。

先日、旅行産業経営塾の山田學塾長の喜寿のお祝いがありましたが、その祝いの会を控えたある日、この真っ赤な『赤とんぼ』が塾長の肩にとまったそうです。それを見て、若くして亡くなった腹心の部下『がんちゃん』がお祝いに駆けつけてくれたのか、と思われたそうです。

なるほど、そんなこともあるのかもしれません。はたと考えてみたら、私は、『赤とんぼ』を最近見ていません。「これは、いかんなあ。」と思いました。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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