親子の関係

つむじかぜ311号より


「では、ご両親と一緒にケーキの入刀です!」花嫁花婿と一緒に両親が一緒に入刀する。そんな結婚式が増えているという。最近は、親も子供の結婚式で“主役”となることに抵抗がないそうだ。子供の方も親と一緒にあれこれすることをむしろ望んでいるという。中には、新婚旅行も一緒に行く親もいるらしい。

「できちゃった婚」が増えて、身重のお嫁さんに代わってその母親とお婿さんで結婚式場に打合せにくることが多くなっているそうだ。結婚式場も最初は当惑していたが、最近は、積極的に親御さんを打合せに呼ぶそうだ。その方が、後でもめないし式の費用も張る。式当日は、その母親担当の世話係をつける。それがクレームを抑えるもっとも有効な手段になるというから感心してしまう。

結婚しても、実家から30分以内に住むケースが圧倒的に増えているそうだ。特に、奥さんの実家近くが多い。共働きが増えているのがその原因らしいが、子供の面倒を親に見てもらったり、保育園に迎えに行ってもらったりもできるという実利からだけではないようだ。むしろ、“一緒”に暮らすことそのものを望んでいる。

親や上の世代に抵抗がなく、「独身王子」とよばれている男子も、親を温泉旅行に連れて行くなどという殊勝なことをごく普通にやる人が多いそうだ。母親と娘の旅行は以前から結構多かったが、最近は、父親と息子という組み合わせも増えているらしい。

「草食系男子」などの造語で知られている、マーケティングライターの牛窪恵さんにお会いする機会があって、こんな話をあれこれ伺ったが、牛窪さんによれば、親子の関係が大きく変わっていて、今までとは違う“新しい家族形態”と捉えることができるそうだ。

子が親を大切にし、同じ家ではなくても30分以内のエリアで“一緒”に暮らす。“両親が一緒に入刀する”などということは私にはあまり理解できないし「子供の自立はどうなる?子離れが必要では?」、と疑問も残るが、さりとて悪いことじゃあないように思う。

牛窪さんは新しい家族とおっしゃるが、私は、むしろ、昔に戻っているように思う。明治のころの親子関係を描いた小説などで似たような話が出て来る。もちろん、儒教の教えに従った家制度とは別物だが、日本人は個の自立より、互いに寄りかかる血縁を大事にするそんな精神的風土があるのかもしれない。幾ら西欧の真似をしても、根底はアジア的だと思う。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

シェアする