生卵をお付けしますか?

つむじかぜ399号より

「天玉そばお願いします。」店先にある自動販売機でチケットを買ってカウンターで出した。「本日は、生卵がサービスですがお付けしますか?」「え?天玉そばなんだけど・・・?」「その場合は、卵が二つ付くことになります。」「二つは、要らないなあ。」「じゃあ、50円お返しします。」 サービスを断ったら50円が返って来た。

「天玉そば」は、「天ぷらそば+サービスの生卵」ということになったのだ。得をしたんだろうが、こんなギクシャクした会話の結果だから、なんだかとても妙な気分になった。

自動販売機でチケットを買うときに、ボタンの傍に分かり易く表示しておけばいいのに、自動販売機の向きとは違う、外の表向きの壁に、「月、水、金 生卵サービス。火、水、木 ワカメサービス」と大きな張り紙があるだけだ。確かに、目立つようにと店の表看板近くに大きな字で書いてあるが、この店にやってくるお客様の動線を無視している上に、少々上のほうに張ってあって気付く人は少ないに違いない。

案の定、私が「掛けそば+サービスの生卵」を食べていると、他のお客様にも、「本日は生卵がサービスですがお付けしますか?」と店員さんが必ず聞いていた。その度に、「じゃあ、入れて頂戴。」といった会話が繰り返されていた。

私がいる間に、「天玉そば」を頼んだ人はいなかったが、きっと、私と同じ会話が一日の中で何回も繰り返されるに違いない。一年中、毎日、「本日は、生卵(ワカメ)がサービスですがお付けしますか?」と繰り返し聞く店員さんにも感心するが、何とか工夫すればいいのにとつい老婆心で思ってしまう。

私たちもそうだが、何年も同じことを繰り返していると、それで良しとして中々改善しようとは思わないものだ。別に、不快な気分になったわけでもないし、50円得したのだから文句をいう筋ではないのだが。

味にこだわった専門店でもなんでもなく、普通の立ち食いそば屋さんだが、実は、何年か前に改装して綺麗になったが、私が中野に会社を構えたときからずっとある。弊社よりもっと古い歴史を持っている。

私が偉そうにどうのこうの言う必要はない。ずっと営業しているのだから。「本日は、生卵がサービスですがお付けしますか?」と聞いてくれた女性の店員さんもずっと同じ人だと思う。声に特徴があるからすぐ分かる。

きっと、これからも、同じことが繰り返されるに違いない。こんなことを書いたが、きっと、改善という名の変化より、同じ人が、同じことを繰り返して、何年も日々続けることの方が、もっともっと大事なことなんだと思う。これからも、頑張って「本日は、生卵がサービスですがお付けしますか?」と聞いて欲しいものだ。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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