3.11から、もうすぐ丸2年

つむじかぜ420号より


3.11から、もうすぐ丸2年、三回忌になる。未だに行方不明の方も多く、残された遺族の方々でも、新しい一歩が踏み出せないまま、時間が止まってしまったままの方もいる。

先日「NHKスペシャル“いのちの記録”を未来へ~震災ビッグデータ~」を見た。携帯電話やカーナビのデータから、3.11のあの震災の時に人々がどう行動したかが分かるというのである。このビックデータを集積し利用するプロジェクトには、多くの企業が参加した。何れもITに詳しい若い人たちだ。震災に科学の力で対抗できるかもしれないという興奮が伝わってきた。

震災後すぐに、自衛隊の救出活動が始まったが、72時間以内が勝負と言われながら、生存者の捜索は、壊れた家を端から虱潰しに当たっていくというものだったそうだ。もし、救出活動にこのビッグデータが使えたらどうだったのか。番組では、実際に救出活動に当たった自衛隊員に、そのビッグデータを見てもらって意見を聞いた。

ある隊員は、「救出活動の際に、生存者が存在する可能性が地図上で数字として見ることができたら、隊員の配置も変わり、捜索の仕方そのものが変わるだろう」と話していた。実用化されれば、かなり強力な武器になる。

また、避難した人たちが、「ピックアップ行動」といって家族などを助けに戻るといった行動も明らかになり、そのために、津波が襲ってきたときには、一旦、減ったはずの人口が再び増えていた市町村が、20以上もあったことが判明した。

更には、三陸海岸の市町村に多かったそうだが、地震後、殆どの人が少ししか移動せず、何分かすると人の動きが殆どなくなった市町村があったそうだ。改めて、近くの避難所に避難してそこで津波に襲われ命を落とした人々が多かったことが示された。

こうした、ITという情報科学の力を使った震災対策が検討される一方で、今、「震災遺構」を津波を忘れないために残すべきだという主張と、思い出したくないから取り壊して欲しい、という意見がぶつかっているという。確かに、多くの方々が災難などで亡くなった場所は、魂が彷徨っているような気がして辛くはある。しかし、世代を超えて伝承していくには、原爆ドームがそうであるように「震災遺構」として残すべきだと私は思う。

人の心を世代を超えて伝えていくという問題と、科学の力を役立てることを、どのように融合させるかは重要な問題だ。少なくとも、科学への過信一辺倒に陥ってしまったとしたら大変危険である。ただ、どちらか一方では、再度の災難に立ち向かえないということも確かだ。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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