法科大学院制度の今

つむじかぜ428号より


自分の子供が医者になりたいと言ったら、「国立大学ならいいが、私立はダメだ」と答えただろう。弁護士になりたいと言ったら「何歳まで司法試験に挑戦するか決めてやれ」と言ったに違いない。いずれにしても、親としては期待したいがお金も掛かるし、子供の苦労する姿を想像して心配にもなる。幸いかな。わが子たち二人には、そんな心配は杞憂に過ぎなかったが、どうも、弁護士という職業は様子が変わってきたらしい。

『弁護士の2割は、経費などを引いた所得が年間100万円以下であることが国税庁の統計で分かった。500万円以下だと4割にもなる。弁護士が急増したうえ、不況で訴訟などが減っていることが主原因とみられる』(毎日新聞 2013年05月08日掲載記事より抜粋)

この場合の所得は、経費を除いているのでサラリーマンで言えば手取りに近いものだというが、これじゃあ、弁護士を目指す人は急減するに違いない。検事や裁判官と違って弁護士は自営業。収入も需給バランスに左右されることになるのは当り前だが、司法制度の改革が大失敗だったということは間違いない。

そんな失敗の実態がしばしば報じられる。最近、法科大学院を出ても司法試験に受からない場合が多く、合格率の低い法科大学院は、国の補助金がカットされると、つい先日も報じていた。挙句の果てに、現在は、司法試験を受験するためには、法科大学院を出るか、司法試験予備試験に合格するかのどちらかが必要だが、司法試験予備試験を受ける人が増えてきて法科大学院の意味が薄れてきたというからもう笑い話に近い。

アメリカ型の訴訟社会の到来を予測し、司法試験合格者を大幅に増やすことを狙って法科大学院制度は、2004年4月に始まった。法科大学院はアメリカのロー・スクールをモデルとした制度だそうだ。簡単に言えば、アメリカの真似をしたわけだ。

しかし、こういう国家政策が明らかに失敗した場合、誰が責任をとるのか。まるで法科大学院を出れば司法試験に受かるかのような幻想が広がり、お金をかけてでも法科大学院に進む学生が大勢出て、親も大いに期待したに違いない。ところが、このあり様だ。

日本という国家が何処へ進むのか。様々なことが最近は言われだした。戦後の日本を形作ってきたものも、大きく見直されるかもしれない。何が幹で何が枝葉なのか。一旦、ぐちゃぐちゃにしたら、同じ道を逆戻りすることはできない。年々、心配することがどんどん増えていく。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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