旅行の中身

*風のメルマガ「つむじかぜ」639号より転載


カンボジアのシェムリアップに来ている。2008年以来だから9年振りである。この街は、アンコールワット観光の拠点として、この20年ほどで急速に大きくなった。2008年当時の観光客数は、韓国人が年間25万人ほどでトップ。日本人は2番目で年間15万人ほどだったと記憶している。

今は、中国人がトップになり、近隣のアジア諸国、タイ、ベトナム、ラオスなどの観光客ももはや日本人より多くなり、これからも伸びていくと予想されている。ここでもまた、「日本人は、最近、減っていますねえ」と言われてしまう。確かに、日本人の観光客数は伸びてはいないが、一定の数は来ている。ただ、近隣の東南アジア諸国の伸びが凄いので、相対的に日本人の割合がどんどん低下しているということだ。

車も随分増えたし、走っている車は日本と遜色がなく、この国の経済発展を象徴しているかのようだ。ただ、道を歩けば、トゥクトゥクに乗らないかと始終誘われ少々うっとうしい。

オールドバザールには、日本人が経営するこ洒落た店も何軒かできていた。周りの殆どの店は昔ながらにクロマーなどを積み上げたゴチャゴチャっとした店なのに、オープンスペースとはいえ、ブティックのように商品を綺麗に陳列した店構えは、私には異様に見えたが人気があるそうだ。バザールを見て回る楽しみをゴチャゴチャ感に求めるだけでなく、実際に買い物をするとなると、こういう店のほうが安心感があるのかもしれない。もちろん品物のクオリティーも高そうだ。

ガイドから少し悲しい話を聞いた。ここは暑いので午前中観光するとホテルに戻って昼休みをして午後の観光と、わりとゆったりしたスケジュールを組んでいたが、今は、2日分を1日で観光するようになって、昼休みも取れず忙しくなったそうだ。日本人の旅行日数は、元々短かったが更に短くなっているという。

こんな不思議な話も聞いた。「他の旅行会社の場合は大変です。40人くらいのお客様を1人のガイドでやります。お客様はいくつかのホテルに分かれていて、レストランでも席が違います。料理も違います」大手旅行会社は、混載といってコースによって使うホテルが異なる場合も、送迎は一緒のバスで行う場合が多い。そこまでは、効率化のためにありうるとは思うが、おなじレストランで席を分けて、食事のグレードを分けるなんて考えたこともなかった。

お客様は、ツアー代金が違うから仕方がないと思うだろうか。しかし、目の前でこんな差をつけられたら、気分はすこぶる悪いに違いない。せっかく旅行にきたのに、嫌な気分を味わうなら来ないほうがいいと私なら考えてしまう。

ガイドは、その国の親善大使である。その国を好きになるもならないも、すべてガイド次第である。なのに、ガイドは、これでは昼食を食べている時間もなく、忙しくてお客様とゆっくり話す時間もない。

旅行とは、見かけは一緒でも中身は全く違う、料金を安くするために必死に工夫をしているのだろうが、いかがなものかと改めて考えさせられた。


★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。


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