物価高と生産性

弊社が海外ツアーを作る場合、当然のことだが、現地のホテルや交通機関、観光、ガイド料などを「買う」ことになる。即ちこれは輸入と同じである。弊社が扱う地域・国は、殆どがドル払いであり円安の影響をもろに受けている。ここにきて、政府が為替介入をして円安を食い止めようとしているが、日米の金利差は開く一方で今後も円安が進むものと思われる。

加えて、物価高が世界中で連鎖反応を起こしたように広がっている。ホテル代、食事代やガイド代、何をとっても2~3割程度、コロナ前と比べると値上げされている。そして何よりも経営上大きな負担になるのは、人件費の高騰である。

一方、最近、日本の国力低下がしきりに報道されている。しかし、日本に住んでいる分には国力低下といわれてもピンとこない。そもそも、国力とは何を指すのだろうか。発展途上国が、先進国と比べてGDPが極端に低く、国としても個人としても絶対的に貧しいということは理解できる。しかし、GDP世界第3位の日本は、国としても個人としてもそれ程貧しくはないからストレートには感じない。

もちろん、円安は以前もあった。私が15年ほど前にイタリアへ行ったときはユーロが170円を超えていて円の価値のなさを痛感した。しかし、その時の物価水準はイタリアの方が日本より安かったように思う。その時は、円安で感じた日本の弱さは表面的な問題だと感じた。

しかし、今回は違う。問題の本質は、バブル崩壊後、賃金を含めたモノの値段が、約30年にわたってデフレのまま上がらなかった日本と、イノベーションによって生産性の高い社会を作り上げ、モノの値段も賃金もインフレ基調できた他の先進国との価値の差であり、問題の本質は生産性の違いだと思われる。

生産性を飛躍的に高めた産業の代表は間違いなくITであろう。あまり好きな表現ではないが「チャリンチャリン商売」などといわれる。仕組みさえ作ってしまえば、後は、何もしなくても毎日自動的にお金が入ってくる。そんなイメージだ。もちろんIT産業がそんなに簡単なものでも単純なものでもないことは理解している。しかし、従来は、物を売るには流通の仕組みに載せる必要があり中間マージンが必ず発生したのに、Eコマースはそれがない。その代わり莫大な初期投資とシステム開発・改修費、広告費等がかかる。それでも、その収益率の高さは私たち旅行産業からすると雲泥の差である。

確かに、旅行産業は労働集約型で生産性は非常に低い。大手旅行会社は長年これに苦しんできたが、コロナで店舗と人の削減が進み、ツアーはダイナミックパッケージというネット販売に切り替え、且つ、ワクチン接種などの業務委託を大規模に扱うことで、飛躍的に生産性が上がった。しかし、これは旅行業の生産性が向上したわけではない。しかも、こんなことは中小にはできない。

弊社のように自社でツアーを作って販売する旅行会社は、まるで製造業のようなものだが、原価率は圧倒的に高く小売業に近い。もちろん、装置産業ではないので設備投資が不要だから製造業とは構造が違う。それでも、仕事の仕組み改善と、高付加価値商品提供で充分生産性を上げ、少しでもツアー代金にそれを反映させたいと考えている。

それでも、来上期のツアー代金の値上げは避けられそうにありません。なんとか、弊社も努力し皆さんに行っていただけるようにしたいと考えています。どうか、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

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