西武新宿線の地下化

もう随分前にこの稿で取り上げたが、西武新宿線の中井駅から野方駅までの4駅区間2.4kmが地下化される。総工費737億円。2014年着工、完成予定は2027年3月。13年もかけての大工事である。とはいっても駅ごと地下に潜るのは新井薬師前駅と沼袋駅のたった2駅だ。

両駅とも多少改札の位置は変わったりしているが利用に支障はなく、私も新井薬師前駅を通勤に使っている。新井薬師前駅は北側の地下に新しい駅をつくり、沼袋駅は今の駅の真下を2階建てにして、急行の通過待ちに対応できる駅にするそうだ。地下では大掛かりな工事が行われているのに、外からは全く分からない。

地下化されれば、新たに利用可能な地上の広大な土地が生まれる。新井薬師前駅前も一緒に開発される計画だ。北口に4階建ての細長いビルがあり1階と2階には飲食店が30軒ほど入っていたが、開発の対象区域に入っているらしくそのほとんどは既に閉店し立ち退いてしまった。2か月ほど前に閉店した気概のある古本屋「文林堂」もこのビルにあった店舗の一つである。

このビルのことかどうかは判らないが、立ち退き交渉が難航し工事は6年以上遅れてしまったとのことだ。人が住まなくなった建物はアッという間に古ぼけていく。このビルのちょうど真ん中、1階部分に横切るように通路があって反対側に出られる。ちょっとした近道になるので私もよく使っていたが、今では、ゴミと埃の吹き溜まりとなり、流石に通るのを避けるようになった。シャッターが閉まったまま、建物の中はネズミの巣になっているに違いない。

完成予定の2027年までこのまま放置されるのだろうか。日本は街が奇麗だと海外から来たスタッフたちによくいわれるが、人の手が入り掃除が日々行われているから、奇麗な街が維持されていると改めて知らされる思いだ。

西武新宿線は、東京では地下鉄やJRと繋がっていない数少ない電車である。お陰で台風や地震などの災害に強いが、他路線への乗り換えには不便である。高田馬場でJRと同じ駅構内で乗り換えができるものの、西武新宿駅はJRや地下鉄の駅とかなり離れており、乗り換えには10分以上歩かなくてはならない。

今度、西武新宿駅と丸の内線に繋がる地下道改修で5分ほど乗り換え時間が短縮される計画があるそうだ。たった5分だが、西武鉄道にとっては悲願。そのために、お金がどれくらい掛かるか知らないが、私などは“5分のために?”と考えてしまう。

ところで、あのビルから立ち退いた飲食店の方々はどうしているのだろうか。こういうケースでは、新しくできた駅前の商店街(ビル)に入る優先権があるなどという話も聞くが、完成する2027年まで待ってはいられないだろう。どこか他の地で新しい店を開いているといいが、これを期に廃業する店もあるに違いない。コロナでもそうだが、環境の変化が人生そのものを変えてしまうこともある。せめて、駅前の商店街が、チェーン店ばかりにならないことを願いたい。

シェアする

コメント一覧

工期が相当延びていますが、それに伴い工費が大幅に増加しているのでしょうね。ずさんな計画による都民税の浪費をしているのでしょう。誰が責任を取るのか?

河村2024.04.13 09:16 pm

コメントを残す

※メールアドレスが公開されることはありません。