映画「縄文号とパクール号の航海」

縄文号とパクール号の航海 縄文号とパクール号の航海

以前、撮影のお手伝いをさせていただいた人気テレビシリーズの『グレートジャーニー』で有名な関野吉晴さんから久しぶりに連絡を頂きました。

今度、長編ドキュメンタリー映画『縄文号とパクール号の航海』が完成し、3月28日から東中野のポレポレ中野にて4週間上映されるそうで、その告知の依頼でした。

前回の映画『僕らのカヌーができるまで』の続編、と言うより、『僕らの…』とテレビで放映した内容、さらにテレビで流すことが出来なかった内容などを包括した集大成的な完成版のようです。初日の12:30~の回には関野さんご本人が舞台挨拶+トークショーがあります。(詳しくは劇場にお問合せ下さい)
関野さんから皆さんへのメッセージも頂きました。合せてご覧下さい。

個人的に前作の『僕らのカヌー・・・』は非常に好きな作品で「モノ作りを根源(原材料)から始める」という、現代人がほとんど体験することがなくなったことを通じて、学生たちや関野さん自身による多くのことへの「気付き」の様子が新鮮でした。その現代の大量消費、大量生産の風潮とは真逆の作り方で作られたカヌーで、インドネシアから沖縄・石垣島までの3年もかかる大航海。関野さんと仲間たちは一体どんな「気付き」をするのでしょうね。公開が楽しみです。

映画『縄文号とパクール号の航海』
劇場:ポレポレ東中野
期間:3月28 日~4月10 日 12:30 / 15:30
4月11 日~4月24日 上映時間未定
公式web : 『縄文号とパクール号の航海』


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長編ドキュメンタリー映画「縄文号とパクール号の航海」が完成しました
多くの人に見ていただきたいと思います。

探検家・医師 関野吉晴

私は40年以上、地球上の辺境を歩いてきました。最初の20年間は南米ばかり歩いてきました。その後はアフリカで生まれた人類が世界中に拡散、適応していく旅路を辿りました。拡散した中で最も遠く、シベリア、アラスカ経由で南米最南端までたどり着いた人たちの旅路をイギリス人考古学者が「グレートジャーニー」と名付けました。その道筋を逆ルートで、近代的動力を使わずに辿りました。その間、モンゴルとネパールでは風の旅行社にすっかりお世話になりました。

足掛け10年の旅が終わり、次はアフリカで生まれた人類がいつ,何故、どのようにして日本列島にやってきたのかを知りたくなりました。

4万年前頃から、日本列島にはさまざまな地域から人類が入って来ました。その中で、主要なコースを3つに絞り、2004年からたどり始めました。シベリアからサハリンを経由し、北海道に至る「北方ルート」、ヒマラヤの山麓からインドシナ、中国、朝鮮半島経由の「中央ルート」。この2つのルートは以前と同じように自分の腕力と脚力だけで踏破し、2008年に終えました。

最後のコースが東南アジアから日本列島に至る「海上ルート」です。海洋ルートは自分の腕力と脚力で進むだけでなく、太古の人に近い旅をすることにしました。ひとつはコンパスやGPS(全地球測位システム)、海図も使わずに航海するということです。そしてもうひとつは、航海に使うカヌーを自分たちで手作りするということです。日本列島にやってきた先人たちに思いを馳せて航海したかったからです。加えて、ものづくりから始めることで、これまでにない新しい気づきがあると思ったからです。

舟の時代性を追求するのではなく、作り方を追求することにしました。そこで、石器時代の人たちがそうであったように「自然から素材をとってきて自分で作る」ことを基本にカヌー造りをすることにしました。

今まで若者を誘うことはなかったし、連れて行って欲しいと言われても断ってきました。しかし今回は多くの若者、特に武蔵野美大の卒業生、学生が舟つくりとその撮影に協力してくれました。いつものシーカヤックの相棒、マルチ冒険家の渡部純一郎の他に、教え子の前田次郎と佐藤洋平がクルーとして参加することになりました。

私たちは「たたら製鉄」で鋼を作り、工具を作ることにしました。刀鍛冶の河内國平氏の紹介で、東工大の永田和宏氏が東京でたたらの指導してくれることになりました。「およそ5キロの工具、斧、ナタ、ノミ、チョウナを作りたい」というと、「それなら、120キロの砂鉄を集めてください。炭を300キロ焼いてください。杉、ヒノキの炭はすぐに燃えてしまうので、だめですよ」と言われて、九十九里では3日間かけて砂鉄を集め、岩手に行って松炭を焼きました。

そして鉄作りがいかに森林を破壊してきたかを学ぶこととなりました。たった5キロの鉄の工具を作るために、3トンもの松材を消費しなければならなかったのです。その後も舟づくりの中で、わたしはさまざまな気づきを得ました。

ふいごを作り、武蔵野美大の金属工房でたたら製鉄をして鉧(ケラ・純度の低い鋼)を作りました。それを東吉野の刀鍛冶、河内國平氏と、新宮の野鍛冶、大川治氏の協力で工具が完成しました。

それらの工具を持ってインドネシアのスラウェシ島に向かい、カヌーを完成しました。この映画はカヌーつくりに1年、航海に3年かかった旅を3年間かけて作った作品です。是非多くの人に見ていただきたいと思っています。

公式web : 『縄文号とパクール号の航海』

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