ネパールドキュメンタリー映画「世界で一番美しい村」先行公開レビュー

2017年3月25日より東劇にてロードショーされるドキュメンタリー映画「世界で一番美しい村」。監督と配給先より先行上映会のお誘いをいただき、風の旅行社のスタッフ3名で見させていただく事になりました。

監督は写真家の石川梵さん。ジャーナリストとして東日本大震災を取材した経験に基づき、2015年4月に発生したネパール大地震の後すぐに現地入りし、その甚大な被害状況を撮影します。その際、震源地で出会った少年に、「また村に戻ってくる」「孤立した村の惨状を世界に伝える」と約束した事が、今回の映画化に繋がるきっかけになったのだそうです。



ネパールの首都・カトマンズの北西77キロ地点にあり、グルン族の文化や伝統を大切にする山村「ラプラック村」が舞台。ネパール大地震の震源地だったため、建物の倒壊などによって村人24名が亡くなる大被害が発生し、斜面の地盤が緩んでしまった事で政府から集落の移転勧告までされてしまいます。

映画では、ラプラック村から徒歩で往復3時間のグプシ・パカ(パカとは広い暖斜面を意味するネパール語)と呼ばれるキャンプで避難生活を送る子供達、トレッキングガイドだった夫を雪崩で亡くして憔悴する村で唯一の看護師、そしてボン教の氏神様がいるラプラックから離れたくないと話す村の古老達の葛藤を、三つの小篇に分けて丁寧に追っていきます。



石川監督は、「当初は『震災を撮る』つもりだったが、いつか『生活を撮る』という目線に変化した。」と話します。マスメディアや視聴者にすぐに飽きられてしまうインスタントなニュースを「流す」のではなく、そこに生活している人々との距離を縮め、そこに生活している人々の目線で「伝える」ための道具が映画という手段だったという事でしょう。

もちろん本編では震災直後の映像や悲惨な避難生活の様子も映し出されますが、それ以上に、水牛を追う遊牧生活、子供達の学校風景、グルン族の伝統であるハニーハント、僻地での往診医療、古い文化を伝えるボン教のお祭り、そして新たな子供の誕生など、どんな環境でも笑いを忘れずに逞しく生きる人々の日常を多く切り取っています。



この「世界で一番美しい村」というタイトルは、風景だけではなく、震災があろうがなかろうが変わりようのない普通の人間の営みこそが美しいのだ、という監督の思いが形になった表題なのではないでしょうか。 ※グプシ・パカはマナスル山群ヒマルチュリ峰を望む“美しい村”ですが…

全ての人にとって普遍的であろう「どこで誰とどのように生きていくか」という事について考えさせられる映画です。ネパールに行ったことのある方も、ない方も、ネパールの山村生活をなんだか懐かしいと思う方も、逆に新鮮だと思う方も、鑑賞後には魂が揺さぶられるような感覚を味わえるはずです。


左から石川梵さん、関野吉晴さん、小松由佳さん左から石川梵さん、関野吉晴さん、小松由佳さん

上映後のトークイベントでは、冒険家の関野吉晴さんから、「これは梵さんが“しつこく”撮った作品だ」と伺いました。実際、監督は一年半の撮影期間中六回もネパールを訪れ、映画の完成後もラプラック村で上映を行い村人との交流を深めているそうです。

結局、今回の映画でラプラック村移転問題の結論が示される事はありませんでしたが、きっと近い将来、成長した主人公達やラプラック村の最新情報を目にする機会があるでしょう。続編、続報に期待して待っていたいと思います。

「世界でいちばん美しい村」予告編



「世界でいちばん美しい村」公開情報

  • 日 時:3/25(土)~4/7(金)
  • 会 場:銀座松竹東京劇場(東京・銀座) ※その後全国ロードショー
  • 監督・撮影:石川 梵
  • ナレーション:倍賞 千恵子
  • 詳 細「世界で一番美しい村」公式サイト


ネパール情報いろいろ掲載




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