小川 康の『ヒマラヤの宝探し 〜チベットの高山植物と薬草たち〜』

紅景天と同じ仲間のツェン 薬には根を用いる
ソロ・スクダ・ロイ・ツェパ・セル
ソロとスクダ(アブラナ科)は肺の熱を取り去る
『四部医典』論説部第二十章
しかし果たしてこれがチベット医学による処方かと問われると疑問で、なぜなら教典には高山病なんて記述はないし、考えてみればチベット人は峠でも越えない限り高山病とは無縁のはずである。教典の記述も抽象的で的を射ていないものの、最近の科学的調査により肺の酸素交換機能を高めるという素晴らしい結果がもたらされている。でもそんな素晴らしい薬草を現地の人が日常的に用いることはなく、チベット薬の一部で用いられる以外はほとんど見向きもされなかったのが実情である。したがって紅景天による村おこしにより一時的に誰かしらが潤ったものの、その代償として紅景天は一気に激減してしまった。写真はソロ・マルポの代用として認められているツェンという同じベンケイソウ科の薬草で、こちらはラサ市内のあちこちで見かけることができる。実際、本家と代用品でどれだけの差異が認められるか知らないけれど、ここは本家を守るためにもツェンに犠牲になっていただいてはどうか、と酷なことを考えている。ごめんね。もっとも、みなさん風の旅行社の指示に従っていれば大丈夫ですから、と書くとやはり紅景天の売り上げが落ちるので、ここは驚くべき噂を公表せねばなるまい。なんと旧ソ連宇宙飛行士の保健食として採用されていたのだという。歴史の深さと重み、伝統の名の下に宣伝されている紅景天が、一方では最先端技術の象徴でもある宇宙飛行士のお墨付きも同時に得ているとは、なんとも上手く立ち回っている、いや、すいません、さすが素晴らしい。もしかしたら風のプレミアムツアーで宇宙旅行が実現するかもしれないので調査しておく価値はあるだろう。

タルプ(グミ科)
タルプ・ロ・コ・タクジュ・ベーケン・チュ
タルプは肺の病を掘り出し、血を溶かし、粘液を断ち切る。
(同上)

ラダックの州都 レーで見つけた広告
さあ、あなたは紅景天とタルプ、ラサとラダック、どちらを選ぶ?この究極の疑問を解決すべく、今年の夏、村上氏(ラサ駐在)と飯田氏(ラダック駐在)に毎日服用してもらい、後日特別企画としてマラソンで代理戦争してみてはどうでしょう。風の公認飲料の座を巡って、今年、両駐在員の肺が熱い!なんてわけないか。

2009 年 8 月 3 日 月曜日



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