「道中停車」の旅 〜我々だけの風景や人々との出会いを求めて〜

道はイラクまで続く(シリアにて)
1 道はイラクまで続いている。
いつになったら通れるようになるのだろうか。(シリアにて)
オーバーランドmap


私はここ十数年来、お客さんと共に、線が引ける限りの陸路の道を走ってきました。その距離は、約20万キロを越え、換算すると地球を5周以上も回った事になります。
その時に写した何気ない写真を羅列してみました。朝日や夕日に輝く荘厳な山の写真はプロのカメラマンが、華やかな民族衣装に彩られた祭りの映像はテレビが写し出してくれます。世界遺産の美しい画像は、そこら中に溢れています。しかし、観光化されていない村や街、道中の普通の景色、普段着の顔は、なかなかお目にかかることはできません。そんな我々だけの風景や人々との出会いを求めて、バス旅を続けているのかも知れません。
「道中停車」の旅をとくとお楽しみ下さい。


路傍のチューリップ(イラン)

2 路傍のチューリップ

国道沿いで見かけた野生のチューリップの群落。実は栽培されているチューリップは、トルコからオランダに輸入、改良されたもので、その原産地は中央アジアからイラン、トルコまでの広範囲に亘ります。
日本人の「この花は何ですか?」という質問は、世界中のガイド泣かせですが、これならわかります。05年、06年と見られた花は、08年には姿を消していました。
(2006年4月 カザフスタン・アルマトイ→キルギス・ビシュケク)


イランに続く草原の道

3 イランに続く草原の道

何の変哲もない草原ですが、これがイラン西部の風景というだけで意味する所は違ってきます。モンゴル帝国の版図は、一時東ヨーロッパまで伸び、チンギスの孫フラグが、タブリーズを中心としたイル・ハーン朝を興しました。なぜ遊牧民族のモンゴルが、不毛の砂漠=イランに帝国を作ったのか不思議でしたが、モンゴルにも勝るとも劣らない草原が広がっているのを見て、その疑問は氷解しました。
(2006年5月 イラン・ザンジャン→タブリーズ)


何もないけど心惹かれる国

4 何もないけど心惹かれる国

ラオスに世界遺産は二つ、ルアンパバーン市街とワット・プー遺跡です。しかし前者のコロニアル風な建物は本物のフランスの建築に、後者はアンコールワットの遺跡群には及びません。他の観光地も大同小異で、ラオスは「これ!」といったものがないのにも関わらず、「心惹かれる国」なのです。
確かに食事もおいしいのですが、実のところは、人の良さ、人の温かさ、人の優しさに尽きるのかも知れません。子供たちの一日精一杯遊んだと言わんばかりの泥だらけの格好と満足そうな笑顔を見ればわかりますよね。
(2007年2月 ラオス・コーン島→タケーク)


「一緒に写真撮ってくれませんか」

5「一緒に写真撮ってくれませんか」

シルクロード沿いの国々で、特にイランとトルコでは、日本人がよくもてます。学生たちの一団と会えば、ワーッと寄ってきて、「一緒に記念写真を撮ってもらえませんか?」と声を掛けられること数知れず。「こんなしわくちゃなおばあちゃんなのに、いいのかね」とは、お客様の声。キャーキャー、ワイワイ。ちょっとしたスター気分です。
トルコでも、観光客が多いカッパドキア以西ではこうはなりません。
(2008年5月 トルコ・スメラ僧院)


お約束の崖崩れ

6 お約束の崖崩れ

道路が閉鎖され、修復工事が終わるまで待つこと約5時間。ヒマラヤ山中の「花の谷」に咲きほこる花々と出会うには、崖崩れが頻繁におきる雨期のまっただ中に旅をしなければなりません。日程表にこそ書いてはいませんが、崖崩れは織り込み済みなのです。
バス旅に、パンク、崖崩れ、事故渋滞はつきものです。「大きなハプニングは困るが、命に別状がない小さなトラブルは、なければつまらない」とは、まさにバス旅を象徴するようなお客様の言葉でした。
(2008年7月 インド・ルドヤプラグ→バドリナート)


竹馬でとおせんぼ

7 竹馬でとおせんぼ

インドでは牛が、中国・新疆では羊が、車の通行を妨げます。エチオピアでは、竹馬に乗った子供たちが、前に立ちはだかりました。写真を撮らせて、お金をもらおうという魂胆です。敵もなかなかやるもの。芸をしないただの物乞いには、金をやらない主義ですが、彼らの発想の豊かさと努力に負けて、思わず誘いに乗ってしまいました。
他にも車を止められるのは、ミャンマーではお布施、トルクメニスタンでは検問、中国では料金所と、その国のお国柄を表しています。ただ走っているようですが、色々と仕掛けがあるのです。
(2006年9月 エチオピア・アルバミンチ→ジンカ)


今回は、観光地の写真を一枚も載せませんでした。バスに乗っているだけでも、田舎を見て食べて行くだけでも、バス旅は十分に楽しめるのです。

風通信」35号(2008年10月発行)より転載

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