マニュアルを超えた仕事

つむじかぜ303号より


「サービスの先には満足しかない。サービスを超える。そこには感動がある」。ある講演会で某ホテルの元経営者の方から、先日、こんな話を伺った。私は、最初は、何をおっしゃっているのか意味がよく分からなかった。
顧客満足を高めることがサービス業の基本である。なのに「サービスの先には満足しかない」。とまるで、それを否定するようなことをおっしゃるのに最初は面食らってしまった。

講演が進むうちに、疑問符は、次第に取れていった。ホテルは、当然ながらどの分野の仕事にもマニュアルがある。しかも、そのマニュアルは、非常に微細なことまで規定しているそうだ。その、マニュアル通りやるのは当然で、それがそのホテルの基本的なサービスを形作っている。
しかし、そのマニュアルを超えて仕事ができないと、サービスを超え、満足を感動に変えることはできないそうだ。満足だけを目標においてやっているようではダメだというのだ。

考えてみたら、弊社には、マニュアルというものがない。それは、マニュアルによって型どおりの仕事しかできないという弊害を恐れるからだ。旅行の仕事は、臨機応変に様々なことに対応していかなくてならない。個々のスタッフが、お客様が、何を考えどんなことを欲しているのか、想像力を働かせてそれに応えていくことが必要だ。

だから、マニュアルは、その想像力を失わせる「悪」と捉えてきたのである。私自身も、型どおりにしか対応しない接客態度に辟易とすることに、日々色々な場面で出会うので、それをマニュアルの弊害と思ってきた。

しかし、それは、マニュアル自体の問題というより、そのマニュアルを基本にしながらも、それを超えるようなお客様への対応ができないことこそが、問題なのだと感じた。

そのホテルでは、一人一人にそれが浸透しサービスを超えて仕事ができるようになるまで6年掛かったそうだ。弊社では、マニュアルがない分、スタッフが動きやすくもあるが、仕事にばらつきがあったりすることも事実だ。もう一度、一から考えてみる必要があることは間違いない。

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