無形文化遺産「和食」

つむじかぜ458号より


和食がユネスコの無形文化遺産に登録されることが決まった。歌舞伎や能楽などに次いで日本では22件目だそうだ。

(以下、NHKのニュースwebの記事から抜粋)
静岡文化芸術大学の学長で、和食を申請するための検討会の会長を務めた熊倉功夫さんは、申請した背景について、「登録を目指した本当の気持ちは、和食が国内で大変大きな危機にあるという、危機感から来ている。われわれの家庭を考えてみても、若者の和食離れなど家庭の味が伝わりにくくなっていることが大きな問題と考えた」と振り返り、「今回の登録を機に日本人自身が和食に対してもっと誇りを持って、次世代につないでいく決意をするいいチャンスだと思う」と話していました。

一方、これに疑問を呈する人もいる。12/4の朝日新聞朝刊で、京都・祇園の板前割烹「浜作」の3代目主人、森川裕之氏は、「異議あり」のコーナーで、「和食はグローバル化と無縁であるべきだ」と主張された。

フランス料理やイタリア料理は絶対料理。世界中、何処でも絶対的な味が出せる。一方和食は「和食は淡い出汁(だし)の力を借り、素材がもつ本来のうまみを引き出す料理で、四季の変化に応じて味付けも微妙に変える。時に山椒やユズの香りを加え、味わいを引き立てて風味を豊かにする。つまり相対的な料理なんです」

「浜作」は森川氏のお父さんの代にホテルや百貨店にも広げたが、91年に裕之氏が引き継いでからは、本店だけに絞ってしまったそうだ。そして、以下のような、厳しい指摘もされている。まさに和食職人ここにありだ。

「百の伝統を繰り返し修得した末に、初めて新しいもんが一つ自然に生まれる。それが前衛でしょう。しかし、いまあるのは、時代の共感を得ようとするあまりに、単なる迎合で終わっていませんか」
若者を中心とした深刻な和食離れが懸念されているようだ。和食が注目され、その伝統が保護されていくことに私も異論はない。しかし、観光でもそうだが、ユネスコの権威におもねて商売をしようという人たちが多すぎる。

既に、和食をどう海外で売り込むか。そんな企業の戦略合戦が始まっている。森川氏は、「(商売と)文化を残す話を混同するから違和感が出てくるんです」とおっしゃる。旅も文化と深く関わっており、そのことを抜きに、現地の文化、歴史、生活習慣を無視して、単に観て楽しむだけでは、単なる商売になってしまう。もちろん、商売をしていることに間違いはないのだが、その土地の、文化を残す、生活や習慣を残す、そうしたことに私達の旅作りが貢献できたらと思う。

「排他的だから京料理が残った」この森川さんの指摘は、なんでもかんでもグローバル化の必要性を説いたり、新しいものへの挑戦などといって精神主義的な問題に昇華してしまう風潮に、極めて原則的な一石を投じているように思う。私は、大変勇気付けられた。世の中には、凄い人がいるもんだと改めて思う。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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