労働力不足

先日、職場近くのラーメン屋に入り、自販機で食券を買おうとしたら「販売中止」の張り紙がしてあった。店員から「今日は人がいなくて昼の販売を中止しました。相済みません」と、平身低頭大変申し訳なさそうに謝られた。一旦、開店したものの昼のアルバイトが急遽来られなくなったのだろうか。日本の人手不足もついにここまで来たかと唖然とした。

日本の労働力を示す指標には、生産年齢人口(15歳から64歳)と労働人口(15歳以上の就労人口+完全失業者)の2種類がある。前者は1995年の8,716万人(総人口の69.5%)がピークで、2023年には概算値で7,400万人(総人口の59.4%)まで低下した。後者は、2023年までは高齢者と女性の労働市場への参入で増加してきたが、2024年からは、減少に転ずると予測されている。それでも、2030年までは完全失業率が低下し就業人口は僅か27万人ほどだが増加するそうだ。労働市場は、完全に売手市場である。

先日、タクシーに乗りながら運転手さんと話をしたら、コロナで20~30%程度のドライバーが減り、募集しても集まらないそうだ。実際、流しのタクシーが減ったので、わざわざ手数料を払ってでもアプリで呼ばなくてはならないという現象も珍しくない。田舎に行けばタクシーの不足はもっと深刻で、買い物や通院などの生活の足に支障が出ているという。

これを受けて、ライドシェアの検討が始まった。ライドシェアとは、自家用車で一般の人が有償運送、すなわち自家用車でタクシーのようにお金を取って人を運んでいい、という仕組みだ。その自家用車を使うドライバーと利用者をマッチングさせるのがUberということになるが、日本では、今は「白タク」行為として禁止されている。これを規制緩和しようというわけだ。これに、タクシー会社などの運送業者が猛反発している。先ほどのタクシーの運転手さんも「田舎は仕方がないでしょうが、東京でやられたら私たちは死活問題ですよ」と、ため息交じりに反対を訴えていた。

私は、旅行会社が自動車(仮称、ブルーNo.)を保有し観光目的に使用できるようにすべきだと以前から主張してきた。今は、運送業者の車・バスかタクシーを使うのが原則だ。日本国内で7~10人乗り位のバンをブルーNo.として登録しツアーに使えたら面白いツアーができる。ライドシェアで、実質的に同様のことがきるようになると言われているが、安全管理上の問題もあるし、まして、運送業者の生活を奪うような意図は私にはなかったので複雑な思いである。

人手不足は、すぐにでも労働が機械やAIに置き換わるならない限り、現下においては、人口減少下の少子高齢化という根本問題が横たわっており解消されない。よって、当面は海外から労働者を受け入れるしか解決手段がないといわれている。現在は、技能実習生という名目で、事実上、単純労働を受け入れている。しかし、転職ができないなど人権保護上もかなり問題が多い。

政府も漸く改革に動きだし2022年11月に検討会を設置した。2023年4月には、技能実習生制度は廃止し、受け入れ可能職種は、特定技能制度に合わせ、中長期の労働者を受け入れていくといった中間報告が出ている。

しかし、短期の単純労働者こそ人が足りないのに、職種を絞り込んだまま中長期の労働力を外国人に頼ることで、今、人手不足に直年している現場の苦悩は解消するのだろうか。日本には、季節労働が多く短期労働者が必要な職種が山ほどある。そういう労働現場こそ人が足りない。正面から外国人を労働力として受入れ、短期でも就労できるようして頂きたいと思う。

治安悪化や不法滞在などの問題が後を絶たないので、規制緩和にブレーキが掛かるのかもしれないが、もはや、労働力不足問題は待ったなしである。

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