台湾研修

台北の空は3日間ずっと雲に覆われ薄暗く、ついに最後まで青空を見ることはできなかった。初めて台湾の地を踏んだ私は、「台北って何時もこんな曇天なの?」と旅行会社の人間とは思えないような素人っぽさでガイドのAさんに質問した。「台北の空は、いつもこんな感じね」とあっさり言われてしまったが、まるで冬の日本海側の空のように一日中、分厚い雲に覆われて南国らしさを一つも感じなかった。『千と千尋』以来、つとに有名な観光地になった九份など、一年の内2/3は雨だというからこの曇天に頷けなくもないのだが、意外の一言に尽きる。

というわけで、1月26日から2泊3日でトラベル懇話会の台湾海外研修旅行に参加した。初日はSDGsに取り組む台湾一の高層ビル「台北101ビル」を見学。2016年、同ビルは台湾の企業として初めて持続可能性を追求するアジアの「グリーンリーダーシップ賞」を受賞している。地下のごみ処理施設で廃棄物は30種類以上に分類され、全ビルのテナントも巻き込んでリユースやリサイクルが実践されている。その様子を見学し、企業研修や教育旅行の素材になりうるのか検証するのが今回の研修旅行の眼目である。少々、表面的な取り組みのように感じたが、そうすることで優良企業がテナントとして入ってくれるのだそうだ。

その後は、一般的な観光ルートではあるが、台湾の靖国神社に相当するといわれている「忠烈祠」で儀仗兵の交代を見学。50分ほどバスに乗って台北の郊外に出て十份、最後に九份でお茶と夕食を愉しみ、翌日は故宮博物館を90分ほど鑑賞した。

ガイドのAさんが、結構年配者だったせいだろうか。歴史解説が多かったのは嬉しかった。日清戦争以来日本が台湾を50年間占領したが、悪いこともあったが良いことも多かった。鉄道も通ったし水道設備も整った。そして日本の一番の功績は教育制度を整えたこと。それまでチャンスがなかった人々も教育が受けられるようになった。これにはみんな感謝しているという。

1949年、蒋介石が約250万人の兵を連れて台湾に逃げてきたとき、彼らは、台湾人は字が読め、台湾には水道があったことに衝撃を受けた。「蒋介石の兵隊たちは文盲だったよ。水道に驚いた彼らは、蛇口だけ買って家に取り付けたが水が出ないといって怒ったよ。これ、本当の話よ」Aさんの話は、面白おかしくするために多少脚色はあるものの、実際そうだったに違いない。中国の管理下のほうが約400年と遥かに長いが、その時代はまるで時間が止まったかのように何も変わらなかったようだ。「日本が来たらたった50年で台湾は大きく変わったよ」。

1930年当時、東洋一のダムと称された「烏山頭ダム」を完成させ、嘉南平野一帯の水利設備「嘉南大圳」を完成さえた八田與一の話も出てきた。日本では八田與市のことも占領下の台湾で日本が何をしてきたかも教えない。「黒四ダムは1963年完成。烏山頭ダムは1930年。台湾の方が早かったよ」Aさんの話は快調だが、そこには日本人の知らない台湾の歴史がある。

私は、トラベル懇話会の副会長をしているので、毎年、同会の海外研修には参加している。昨年は、フィンランド。2024年8月下旬にはモンゴルで行うから手配する側になる。モンゴルのすばらしさを伝えられたら幸いである。

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