人手不足

私が亜細亜大学で卒業させた学生は、すでに半分くらいが転職している。とはいっても、ゼミ生たちだけだから、その数は40人ほどに過ぎないが、“あんなに必死に就活をしたのにいいのか?”と思ってしまう。もちろん、本人は熟慮してのことだろうが、私には簡単に転職したように映る。私が薦めたたこともあり旅行会社へ11人が就職した。しかし、3年間のコロナ禍を経て残っているのは僅か3人である。仕方ないが残念でならない。コロナで旅行会社の感染症パンデミックに対する脆弱さが白日の下に晒されたから、彼らが将来への不安を募らせ転職したのも無理はない。

一方、いたるところで人手が足りない。旅行会社も同じで求人しても応募は僅かだ。ただ、旅行会社は、コロナ禍で人員も減らし、且つ、自主退職も多かったが、仕事が戻ってきたら人が足りないというのが実態だ。辞めたスタッフが戻ってくるケースは僅かである。

日本には、再雇用を約して解雇するアメリカのレイオフ制度は認められていない。レイオフが可能だったら、もう少し人材を残すことも可能だったと思う。

人が足りないことが現場の働き手に大きな負担となっているケースも多い。3月5日、毎日新聞は、公立病院で働く看護師や臨床検査技師、事務職員の内8割が今の職場をやめたいと考えていると報じた。自治労の調査に10代から60代の男女1万184人が回答。内「うつ的症状がある」との回答が3,590人。なんと36%にも上る。職場をやめたいと「常に思う」が1,479人。「しばしば思う」が2,434人、「たまに思う」が4,653人。合計で79%に達し、前年度を7ポイント上回ったそうだ。多忙、人員不足、賃金に不満という理由が上がっている。

それにしても、この数字は異常である。医療現場は崩壊寸前なのか。実際、うつ病で病気休職や退職に追い込まれている職員もかなりの数に上るのではなかろうか。医療過誤などへの対応もありストレスが溜まっているに違いない。コロナ禍で過酷な労働を強いられ頑張ってきたのに、騒動が収束したと思ったら慢性的な人手不足。これでは立つ瀬がない。

一方、技能実習生などの外国人が、宿泊施設や医療機関、空港、バスやタクシー会社、飲食店などの働き手として期待されている。しかし、2023年6月時点での在留外国人は322万人。内、永住者が約88万人、技能実習は僅かに約35万人、特定技能は約4万人に過ぎない。政府は、2022年11月「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」(有識者会議)を設置し、2023年11月に最終報告書をまとめた。報告書では、技能実習制度を人材確保、すなわち人材育成だけでなく労働力としても位置付けた。政府も人手不足に陥っている労働現場の労働者として、やっと外国人を日本に入れる方向に舵を切ったと思ったが、法案もまだ国会に出されておらず遅々として進まない。したがって、すぐに外国人労働者が増えるわけではないから人手不足は当面解消しそうにない。

前回、この稿で書いたカタールが国民数の5倍以上の外国人に労働力を負っているのと比べると、その違いに唖然とする。遊牧の民カタールと農耕の民で島国の日本では外国人に対する考え方が違うことは分かるが、現場がこれだけ困っているのだから早々に対応してもらいたい。事は緊急を要する。あんなみっともない国会をやっている場合じゃない。

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