「中央アジア・グランドツアー」 チベット編 PART3 〜マナサロワール湖にて「神秘合戦」〜 [LHASA・TIBET]

カイラスの南側に広がる聖湖、マナサロワール湖。 チベット語ではマパム・ユムツォ。 マパム=「征服されざる」、ユ=「トルコ石」、ツォ=「湖」の意味である。 

何が「征服されざるか」というと、「仏教の教えやその尊さが他に敵うものはない」とされ、そのような名前が付けられた。

1千年近く昔のこと。
チベット仏教代表のカギュ派の行者ミラレパと、チベットの土着宗教のボン教代表、ナロ・ボンチェンが、マパム・ユムツォ、そしてカイラス付近で「神秘合戦」(=超能力合戦)を行なった。 洞窟をどちらが速く掘れるかとか、カイラスの頂に登るのはどちらが速いか競いあったりして、お互いの優劣を決めたのだ。 「太鼓の音」に乗ってカイラスの頂を目指したナロ・ボンチェンとは違い、聖者ミラレパは「朝陽の光」に乗って行ったりと、超能力合戦はミラレパの圧倒的な勝利に終わる。 その故事を記念するため、そして仏教の勝利を祝福するため、「マパム・ユムツォ」と名付けられた。

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(マパム・ユムツォとカイラス山)

そのマパム・ユムツォそばのゲストハウスで、夕ご飯を食べていたときのこと。
我々のカイラス旅行に付き合ってくれた、問答大好きの英語ガイド・ゲンツェンと、ゲストハウスオーナーのニンマ派の行者、ノルブ。 このキャラの濃い二人が「神秘」合戦ならぬ、「こんな神秘を今まで見聞きしてきたぜ!」合戦をやり始めた。 飯を食べながら僕は耳をそばだてる。

ゲンツェン: 「俺の昔のお客さんで、ネイティヴアメリカンがいた。 ナムツォに彼を連れて行ったんだけど、彼は湖岸のある石を見つけて、何か呪文を唱えながらその周りをまわり始めたんだよ。 そのあとちょこんとその石のそばに座ったあと、ずっと瞑想しているんだ。 半日近くも。 僕はずっと離れたところで、いろいろ散歩したり、地元のお坊さんたちと話したりしていたんだけど、日が暮れてきたんで彼のところに行ったら、彼が笑いながら、僕が行ったところやお坊さんたちと話した内容まで、細かいところまで全部当てていくんだな。 びっくりしたよ。 これは千里眼(チベ語で「ンゴンシェ」)とかなんとかいうやつだ。」

ノルブ: 「・・・ 僕は空を飛ぶ行者を見たことがあるよ。 あれにはたまげた。 だってそれまで聞いた事あってもそんなもの見たことなかったから。 なんでも「気の瞑想」(チベ語で「ルンゴム」)に熟達した人間は空も飛べるようになれるようだ・・・」

ゲンツェン: 「ルンゴムといえば、思い出すことがある。 僕の親しかったラマの話だ。 彼は文革中投獄されて食べ物や飲みものさえも与えられなかったらしいんだな。 数ヶ月そのまま放置された。 ひどい話だけど、彼はぜんぜん元気だったらしいよ。 なんでもその「ルンゴム」に長けてくると、空気中から食べ物を取り出すことができるんだ。 そのラマはそうやって数ヶ月生き延びたよ。」

ノルブ: 「・・「ルンゴム」か・・。 そういえば、「メゴム」(火の瞑想)ってのを知ってるか? 自分が火になる瞑想だ。 これをマスターすると、極寒の吹雪の中でも一晩中瞑想できるって話だ・・・」

話は尽きない。
チベットの聖者たちが数多くの奇跡を行ったマパム・ユムツォ。
その聖湖が、神秘の中をリアリティ濃く生きるチベット人たちの思いをヒートアップさせていく。 

Daisuke Murakami

3月7日
(ラサの)天気 くもり
(ラサの)気温 −5〜3度 
(ラサでの)服装 ジャンパー、コート、長ズボンが一般的です。日焼け対策は必須。 空気も非常に乾燥しています。

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