ネパールの宗教と生き神クマリ

ネパールは、人よりも神々の方が多くいるといわれている国です。ヒンドゥ教や仏教など異なる宗教が混在しながらも調和しています。

ネパールのおもな宗教


ネパールは2006年まで世界で唯一ヒンドゥ教を国教としていました。現在はヒンドゥ教(約80%)、仏教(約11%)、その他イスラム教やアニミズムが混在しています。

ヒンドゥ教 -Hinduism-

ヒンドゥ教は輪廻や解脱を含む時の循環を信じており、生活様式、身分、職業などによるカースト制を特徴とする宗教です。現在はヒンドゥ教徒の割合が国内で最も多くなっています。


ネワール仏教 -Newal Buddhism-

インドからネパールへと伝わった仏教は、その後ヒンドゥ教の影響を受け、独自の「ネワール仏教」を形成していきました。ヒンドゥ教と共存するため、仏教でありながら「カースト制」があるなど、他のアジア諸国に伝わる仏教とは違う仏教スタイルを継承しています。


チベット仏教 -Tibetan Buddhism-

チベット仏教はチベットとの国境付近の民族を中心に信仰され、現在では中国から逃れたチベット仏教徒がカトマンズのボダナート周辺にコミュニティを形成しています。


〜破壊と再生を繰り返す〜 ヒンドゥ教3最高神と所縁の深い神々


シヴァ(大自在天)

宇宙の破壊を司る神。乗り物は聖牛ナンディン。三叉戟を持ち、額に第三の目があり、カイラス山に住むとされる。化身姿にマハカーラー(大黒天)などがある。

シヴァに関連する神々

パルヴァティー
シヴァの神妃。名は「山に住む女神(ヒマラヤの娘)」を意味する。穏やかで心優しい神妃だが、化身姿に荒々しい戦いの女神カーリーやドゥルガーがある。


ガネーシャ(聖天)
シヴァとパールヴァティーの子で、象の顔を持つ、富と繁栄、知恵と文学の神。現世利益をもたらす神様として絶大な人気を誇る。乗り物はねずみ。

ヴィシュヌ

宇宙を維持する神。乗り物はガルーダ。10大化身と呼ばれる多数の分身があり、叙事詩「マハーバーラタ」の英雄クリシュナもその一人。ヒンドゥ教では、仏教の始祖ブッダもヴィシュヌの化身と考えている。

ヴィシュヌに関連する神々

ラクシュミー(吉祥天)
ヴィシュヌの妻。幸福、繁栄を意味する幸運の女神。蓮の花に座した姿で描かれることが多い。

ブラフマー(梵天)

宇宙の創造神。聖なる力、宇宙の根本原理「ブラフマン」が人格化した姿。4つの顔、四本の手、白い髭をはやした老人の姿で描かれる。乗り物は水鳥ハンサ。



仏教に取りこまれたヒンドゥの神々


仏教(密教)が興隆する際、ヒンドゥ教の神々を取り入れていきました。これらヒンドゥなど外部の神々は、仏教では「天部」というカテゴリーに所属し、仏(如来、菩薩など)の守護神である護法神となっています。

※ヒンドゥ教と仏教では各神の性格など若干異なります。左記はヒンドゥ教の性格を元にしています。

インドラ

帝釈天。雨と雷を操る、神々の王。好戦的で悪魔退治などの逸話を持つ。ヴァジュラ(金剛杵)を持ち、乗り物は白い巨象。

クベーラ

毘沙門天。財宝の神。北方の守護神とされる。仏教に取り入れられた際、四天王の一人「多聞天」となった。ガンジス川の神・クンビラとは別の神。

サラスヴァティー

弁財天。芸術と学問の神。名は「水を持つもの、優美なもの」を意味する。ヴィーナという弦楽器を持ち、乗り物は孔雀。美貌のため、父ブラフマーから熱烈な求婚にあい、妃となる。

スカンダ

韋駄天。軍神で神軍の最高指揮官。槍を持ち、孔雀に跨る姿で描かれることが多い。シヴァとパルヴァティーの次男とされる。



生き神クマリについて


本当はこんな顔しちゃダメ
本当はこんな顔しちゃダメ

ネパールには数千もの神々がいると言われていますが、中でもクマリはネパール独特の生き神様です。ネパール国王(※2008年に王政は廃止)の守護神でありタレジュ女神の化身とされ、民衆の望みが叶うようにと祈りながら日々を過ごしていると言われます。

クマリは少女の間だけの神様で、血のけがれのない(初潮前)ネワール仏教徒のサキャ出身の少女から選ばれます。健康で、目、まつ毛、声など32の身体的条件を備えたうえで、国や国王と星の相性が良くなければなりません。選考の時(ダサインの8日目の夜)は、寺院の真っ暗な小部屋に連れて行かれて1人で1晩過ごします。

クマリに選ばれた少女は3~5歳の頃に親元を離れ、クマリの館(ダルバール広場前)での暮らしを始めます。年に数回のお祭りのとき以外、彼女が館の外に出る事はありません。喜怒哀楽の感情も表してはいけません。勿論、学校にも行けません。