第119回●ディモク ~ダラムサラのお土産~

tibet_ogawa119_5チベッタン・ショール 撮影は小諸

旅といえばお土産。そこで今回はダラムサラでお勧めのお土産をご紹介します。

まずはチベッタン・ショール。これは現在、小諸の自宅に5枚、常備してあり、それぞれMVP級の働きをしてくれている。お客様のひざ掛けに出せば温もりとともに話題もチベットネタで温まる。小諸の寒い冬にはシーツとして用い、またはルンギーのように腰に巻きつけることもある。富山の実家ではソファカバーとして活躍している。ダラムサラでのティーチング中、寒い時は体全体に羽織り、ちょっと寒ければひざ掛け、寒くなければ畳んで座布団替わりにもなるので、現地でも活躍すること請け合い。まるでチベット人のように丈夫で温かく、頼りになる存在である。
メンツィカン在学中、チベッタン・ショールを僕はとても重宝していた。10月ころ気候が寒くなるとともに暗誦試験は佳境を迎える(第14話)。教典を腕に抱えてショールをその上からすっぽり羽織り、歩きながら暗誦の練習に励んでいたのは僕だけではない。虚空を見据え、眉間に皺を寄せながら歩きまわっている学生たちの姿は、けっこうやばい雰囲気がある。ときに街の人たちから「メンツィカンの学生は勉強のしすぎでおかしくなった」などと揶揄されることがあるのはこうした光景に起因していると思われる。しかしショールを羽織ると、不思議と集中力のスイッチが入るのである。むかしは日本でも書生や学生はマントを羽織っていたというから、もしかしたら「布に包まる」という行為には、戸外にいながらにして内に籠るような効果が得られるのではないかと推察している。毎年、1枚ずつ買い換えていたことから、ショールの色がその年のテーマ色になっていた。1年のときは茶色、2年のときは青色、3年の冬は紫色だっただろうか。

tibet_ogawa119_2ゼンを羽織る少年僧
花はハリエンジュ

俗人はこうしていろんな色を楽しむことができるが、チベットの僧侶は各人、ゼンと呼ばれるエンジ色のショールを羽織らなくてはならない。ちなみにチベット僧侶は基本的に長袖の服や下着を着用してはならず、事実、ダライ・ラマ法王の長袖姿は眼にしたことがないだろう(一般僧侶は、エンジ色の長袖服を着ていることがあります)。冬でもゼン1枚を羽織って寒さをしのぎ、学問に励まなくてはならないのだ。僧侶がゼンを羽織り、最後にゼンの片端をパッと背中側に投げる仕草はとても格好よく、僕もたまに真似して学生気分を盛り上げたものだった。日本の受験生のお子さんへのお土産としてチベッタン・ショールはかがでしょうか。そのうち日本で「チベッタン・ショールを羽織って勉強すると合格する」なんて伝説が生まれたりして。

tibet_ogawa119_4ダラムサラで購入した肩掛け鞄
一番右が僧侶バッグ

もうひとつ、小諸で活躍しているダラムサラ・グッズといえば、一枚布で作った肩掛け鞄だ。そのシンプルな作りは意外と丈夫なうえに小さく畳めるので、ちょっと出かけるのに重宝している。小諸では買い物エコバッグとして活用し、日によってデザインを変えることで気分転換にも役立っている。しかし、こちらもショール同様に、チベット僧侶はエンジ色の肩掛け鞄を用いなくてはならない。

tibet_ogawa119_3ディモクの根

ちなみに、なぜエンジ色なのかについては諸説あるが、「いちばん地味な色で修行僧にふさわしい」という説や、「エンジ色に染めるラック染料(第35話)とヒマラヤ紫根(チベット語でディモク)が手に入りやすかったから」という環境による説があり、僕はこの2つの複合によるのではと仮説を立てている。それは、たとえばタイ、ミャンマーの僧衣は、現地で入手が容易なウコンによって黄色に染められていることからも裏付けられる。

tibet_ogawa119_1紫雲膏

また、紫根やウコンが持つ殺菌作用により病原菌などから体を守るためという医学的な理由もあるだろう。薬草は内服する薬としてよりも、染色して身に着ける衣服としてのほうが薬の歴史としては古いという説もある。事実、紫根を用いた和漢薬「紫雲膏(しうんこう)」は外傷、火傷、ひび、ただれの妙薬である。

ショールと肩掛け鞄。ダラムサラが誇る実用的なお土産物を是非、お試しください。

(参考)
そのほかダラムサラのお土産としては、地元産の「カングラ・ティー(第42話)」がお勧めです。ノルブリンカ寺院の入り口付近にあるインド人の店で販売しています。さっぱりとした味でストレート・ティーに合っています。
一枚布の鞄は、マクロードガンジ中心部、マニ寺院の近辺にあるチベット人のお土産物屋で販売しています。チベッタン・ショールは道端ですぐに見つけることができます。