【開講記】厳冬の涸沼。いきなり現れた“あのワシ”とは?

今回、バードウォッチングツアー「風の鳥日和」一行が訪れたのは、茨城県の涸沼(ひぬま)という汽水湖。面積は9.35km²ということですから、東京ドームに換算すると約200コ分もの面積を誇る広大な湖です。周辺の田園地帯や森林を含め、様々な鳥達が生活・飛来するということで有名らしいですが、問題になるのがアクセスの悪さ。そのため、今回は新宿より貸切バスをチャーターすることとなりました。

涸沼での探鳥の様子

涸沼での探鳥の目玉は猛禽類。湖の魚や周辺に生息する小鳥やネズミなどを狙って、ここには様々な種類のワシやタカが飛来します。特に有名なのが、翼を広げると2.5mもの大きさがあるという「オオワシ」。夏の間はロシアにいる彼らですが、冬は北海道など日本の寒冷な地方にも渡ってきます(知床の流氷の上に佇む姿、想像できますよね)。しかし、グループから離れてしまったのか、群れるのが苦手なツッパリタイプなのか、そもそもあんまり寒い所が苦手なのか、その中の1羽が毎年涸沼に飛来するようになって10年ほどになるそうです。これは是非ともお顔を拝見したいところではありますが、なにしろ、東京ドーム200コ分の広さにたった1羽しかいないのです。「涸沼は4回目だけど、まだオオワシは見たことないですね~」というお客様の声も納得です。

さて、新宿から2時間走り、涸沼に到着した我々は、早速湖畔で探鳥開始。期待通り、早速ワシタカ類が姿を現してくれました。まず一番に見られたのはお馴染みのトビ。続いてミサゴ(英語でオスプレイ)。運がよいことに、ミサゴは狩りの瞬間までお披露目してくれました。まるで飛行機が着陸する時のタイヤように、足を前方に出して湖に突っ込む姿に、参加者の皆様も大盛り上がりでした。

バードウォッチャーは“トンビ”とは言わないそう
バードウォッチャーは“トンビ”とは言わないそう
魚を食べて昼休憩中のミサゴ
魚を食べて昼休憩中のミサゴ


いきなりの大物出現に盛り上がりつつ、そろそろ水面の鳥でも観察しようとした矢先…。「来た!オオワシ!」という講師の峯尾さんの鶴(鷲?)の一声! なんと東京ドーム200コ分の広さにたった1羽しかいないというレアなアイツが現れたのです! もちろん、全員の双眼鏡は一斉に上空へ。オオワシは結構なスピードで視界を横切り、少し離れた杉の上に羽を休めました。望遠鏡で覗くと、特徴である黄色いクチバシや白い尾羽が確かに確認できます。実はバスを利用すればもっと近くに寄ることもできたのですが、そこは“鳥にダメージを与えない”というバードウォッチャーのルールを遵守し、望遠鏡でゆっくりと観察することにしたのでした。しかし、遠目からでもとっても格好良い鳥です!

変わった性格らしいオオワシ君
変わった性格らしいオオワシ君
杉の梢に着陸!
杉の梢に着陸!


昼食後は場所を変え、のどかな田畑の中で探鳥を再開。よく見るとつぶらな瞳が可愛らしいノスリや、電柱の碍子の上で休むハヤブサ、チョウゲンボウという小さなタカなど、ここでも多くの猛禽類を観察することができました。他に印象的だったのは、“田んぼの貴公子”との別名を持つ、タゲリというチドリの一種。格好良いのか悪いのか考えてしまうニックネームはさて置き、ニャーニャーという鳴き声、メタリックに輝く翼、そしてオバQの様な飾り羽が目立つ美しい鳥でした。

トビより白っぽいノスリ
トビより白っぽいノスリ
モミアゲのような柄が特徴のハヤブサ
モミアゲのような柄が特徴のハヤブサ

ハヤブサに追われるように飛んできたタゲリ
ハヤブサに追われるように飛んできたタゲリ
タゲリの頭は毛が三本?
タゲリの頭は毛が三本?


日も陰ってきた頃、チュウヒというタカがねぐらにしているという探鳥ポイントに移動。チュウヒの帰宅を待つ間は、湖に浮かんでいる沢山の水鳥達を眺めていましたが、今回見られたのは、ほとんどがマガモやコガモというありふれた種類でした。しかし、望遠鏡を覗いていたお客様が、他とはちょっと違うシマシマ模様のカモを発見! 講師の峯尾さんが確認した所、なんとトモエガモという珍種だということが判明しました。思いがけない出会いにちょっと得した気分です。その後、期待通りのチュウヒに「おかえりなさい」を告げた所で今回の探鳥会は終了。貸切バスで解散場所の新宿を目指したのでした。

チュウヒのご帰宅を待ちます
チュウヒのご帰宅を待ちます
顔が巴模様のトモエガモ(奥の2羽)
顔が巴模様のトモエガモ(奥の2羽)


今回は双眼鏡メーカーKOWAさんのご協力で、観察用の双眼鏡をお借りできました。いつもありがとうございます!

『毎回感じますが、KOWAの高級機は見やすさが違いますね!』


さて、若干宣伝気味になった所で今回のおさらいです。

【今回確認できた鳥達】

キジ、マガモ、カルガモ、トモエガモ、コガモ、カイツブリ、カンムリカイツブリ、ハジロカイツブリ、タシギ、キジバト、セグロカモメ、カワウ、アオサギ、ダイサギ、オオバン、タゲリ、ミサゴ、トビ、オオワシ、チュウヒ、ノスリ、チョウゲンボウ、ハヤブサ、モズ、ハシブトガラス、ハシボソガラス、ヒバリ、ムクドリ、ジョウビタキ、スズメ、タヒバリ、セグロセキレイ、カワラヒワ、シメ、ホオジロ、カシラダカ、アオジ、オオジュリン、ツグミ、(オカヨシガモ)、(ホシハジロ)、(セッカ)、(メジロ)、(カワラバト) *()内はじっくり観察できなかった種類

 

風の鳥日和

 

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