中村のモンゴル出張報告記<その4>
世界の中心で「欲」を叫ぶ!

登っている最中は山の名前を言ってはいけません

絶対に願いが叶う場所!「黒い山」

ハマリン寺院、聖地シャンバラを巡った我々は再び列車に乗るため、サインシャンダの街への帰路に着いた。しかし、大事な場所を忘れてはいけない! 先ほどシャンバラから眺めた北の大地にその山はそびえていた。

普段、モンゴル人はハルオール(モンゴル語で黒い山)と呼んでいるが、名前の通り真っ黒な山だ。恐らく火山の隆起でできたその山容はゴビの大地に真っ黒な三角形のピラミッド型の頂を突き出している。

近くに寄ってみると、山肌は黒い岩で覆われている。恐らく火山岩の一種だろう。聖地サインシャンダのエネルギーの源はこの火山なのだろう。山頂は、女人禁制になっているので、女性は途中の展望台までしか登れない。女性の地位向上を図ったダンザンラブジャーの威光も、この聖地には届かなかったようだ。

(その代わりに「おっぱい岩」を作ったそうだ 詳しくはこちらを参照 →

世界の中心? エネルギースポット「シャンバリーンオロン」

階段が整備されているので、15分ほどで山頂まで上がることができる。標高は約1000m。山頂から南側を眺めるとゴビの広大な景色が広がる。

火山の噴火でできた?黒い岩 火山の噴火でできた?黒い岩

山の正式な名前はハン・バヤン・ズレフ。ハンとは王、バヤンは豊かな、ズレフは心臓、中心という意味だそうだ。この名前がなかなか覚えられないので、山を登っている最中にうっかり「この山の名前って、なんでしたっけ?」とハグワさんに聞いたのだが、「山を降りたら教えます」と答えが返ってきた。

そうだった!
モンゴルでは山の周辺でその名を呼ぶと、山の神を怒らせると信じられている。だから、単に「ハイルハン」(「山」の敬意をこめた呼び方)などと呼ぶのだ。

南は広大なゴビを望む 南は広大なゴビを望む

* * *

活仏の嘘つき親父

この山には、ダンザンラブジャーに絡んでこんな言い伝えが残っている。
3代目のゴビ・ノエン・ホトクト(ゴビの活仏=ダンザンラブジャーの2代前の生まれ変わり)の父親が死んだときのこと。実は、この活仏の父親はどうしようもない嘘つきの泥棒で、死後、地獄に落とされるところだった。ところが、閻魔大王に向かって、

「私が嘘つき? 泥棒? とんでもない。そんなことはありません。私の息子は活仏です。
うそだと思うなら、息子を呼んで聞いてみてください」

と言い放った。

閻魔大王は、このゴビの活仏をあの世に呼び出して「この者の言うことは本当か?」と聞いた。正直なゴビの活仏は、
「残念ながら、この人は確かに盗人の嘘つきです」
と正直に答えた。哀れ、父親は地獄へ落とされてしまったのだ。

そのころ、あの世に呼び出されていた活仏の肉体は魂が抜けて、死んだようになっていた。そこで、弟子たちは活仏が死んでしまったと思い込み、その身体を火葬してしまった。あの世から戻り、戻るべき肉体を失くした活仏の魂は、仕方なくこの山に降りて、その後、人々の願いを叶えてくれるようになった、ということだ。

* * *

世界の中心で何を叫ぶ?

北には山々が連なる 北には山々が連なる

そんな訳で、この山でお祈りをすると「何でも願いが叶えられる」といわれているそうだ。ここぞとばかりに

「お金がほしーい!」

と身も蓋も無い願いを叫ぶ。北側に遠くまで続く山々に届くほど、声が響き渡り、気分爽快だ。

山頂で掲げた祈りの旗(署名入り) 世界が平和でありますように。山頂で掲げた祈りの旗(署名入り)

ハグワさんが苦笑しながら、
「そういう願いはダメだよ。世界平和とか。みんなが健康でありますようにとかじゃないと」。

確かに、「世界の中心」で「愛」ではなく「欲」を叫んでしまった。
改めて

「世界が平和でありますよーに!」

と叫ぶ。
しかし、世界平和を願いながら、

世界平和 → 観光客が増える → 仕事が増える → 自分が儲かる

という短絡的な思考が働いていたことは言うまでも無い。
まだまだ修行が足りないようだ。
<完>

※GWから9月までの毎週出発でモンゴル仏教をテーマに新企画を作りました。(20160317追記)

関連ツアー

列車で行くゴビの聖地サインシャンダ!

よみがえるモンゴル仏教をめぐる6日間

出発日設定2024/08/07(水)
ご旅行代金398,000円
出発地東京
mn-kz-39 mn-kz-39

ツアー

<関連記事>

Who is グル・リンポチェ

世界の中心? エネルギースポット「シャンバリーンオロン」

<これまでの記事>

<出張報告記 序章>サインシャンダ、行ってみたら本当はこんなトコだった!
<出張報告記1>ダンザンラブジャー博物館の誕生秘話
<出張報告記2>ゴビ砂漠のハマリン寺院
<出張報告記3>いざ、シャンバラへ

シェアする