添乗報告記

チベットの達人・飯田泰也と行く ヘミス・ツェチュとラダック満喫9日間(2006年7月)

 

2006年7月1日~7月9日  文●鈴木雅子(東京本社)


ラダックらしい風景(雪山とゴンパ)

ラダックはヒマラヤの奥地、インドのジャンム・カシミール地方に属し、チベット文化圏の西端です。たまたまインド領になったため、中国の宗教弾圧を受けることなく、チベット仏教の教えに基づいた独自の文化が守られ、人々の営みが残っています。今回のツアーはラダックで最大のお祭、「ヘミス・ツェチュ」を見学する特別 企画で、「チベットの達人」ガイドとしておなじみの飯田泰也さんが案内をしてくれました。

のどかな王都・レー


レー旧市街

早朝、デリーからかつてのラダック王国の都、標高3,500mのレーへ。空港に着いたとたん、褐色で荒涼とした景色に包まれます。ラダックの魅力のひとつはその景色。荒涼とした山岳地帯の中、丘の上にポツンとゴンパ(お寺)が佇み、その背景に白い雪山が聳える、という感じで、人々がチベットに対して漠然と持っているイメージ通りなのです。どこを撮っても絵になるので写真ベタの私でも「私、実は才能があるのでは?」と勘違いさせるほど素敵な写真が撮れるのです。写真好きの人には是非訪れていただきたい場所です。

高度順応のためにオススメなのがレーの街の散策。この街は散歩するのにちょうどいいコンパクトさです。街自体、チベット色は濃くありませんが、この街の面白さはたくさんの宗教が共存しているところです。にぎやかなバザールを通って突き当たりにあるイスラム教のモスクの横からオールド・レーへ。入り組んだ迷路のような道を歩いていると、今度はチベット仏教のゴンパが見えます。その後もヒンズー教のお寺、教会と次々と見つけることができます。


お祭りの弓矢合戦

また街の近くには緑豊かな農村が点在しています。ラダックはほとんど雨が降らずとても乾燥しているのですが、四方を雪山に囲まれているため水には恵まれています。夏のこの時期は農業の繁忙期で、あちらこちらで麦がたわわに実り、菜の花の黄色いお花畑がとてもきれいでした。


ピャン村ののどかな風景

レーに近い農村のひとつ、ピャン村へ出かけます。ここには観光客は殆ど訪れません。この村のゴンパに行くと、なにやら楽しそうな音楽が聞こえて来ました。偶然にもゴンパの近くでお坊さんと近所の人が集まって小さなお祭りが行われていたのです。急遽、そのお祭りを見に行ってみることにしました。そこではお坊さんたちが弓矢の腕を競っていました。聞こえて来た音楽は競技を盛り上げるためのお囃子だそうです。お坊さん達は私達を快く歓迎してくれ、お茶をふるまってくれた上に、村人たちはダンスまで披露してくれました。普段なかなか遊べない小坊主たちもお祭りということで羽目を外し気味。顔にヒゲの落書きをして遊んでいた小坊主が自慢げにその顔を私達に見せてくれました。ラダックの人達はとても明るく気さくです。このような現地の人達との交流もラダックの魅力です。

貴重な壁画と明るい農村


アルチ村を散策

ラダック・ツアーの目玉の一つであるアルチ・ゴンパ。ここには、11世紀に西チベットのグゲ王国の一部だった頃に描かれたペルシャの細密画の影響を受けたカシミール様式の貴重な仏教壁画が残っています。色彩 の鮮やかさと筆の細かさは他のゴンパとは桁違いで、その美しさにとにかく圧倒されます。みなさんも熱心に壁画に見入っていました。
ゴンパの壁画を堪能した後は村を散策。壁画で有名なアルチですが、実はのんびりした緑豊かな農村でもあり、これもアルチの魅力の一つなのです。ホテルの隣の畑でグリンピースを収穫している村人に挨拶してから出発。川を渡って民家の横の小道を歩いて行きます。途中、菜の花畑があったり、菜種の収穫をしていたり、レンガで家を作っていたり、羊やロバ、牛に出会ったり、牛の「落し物」を踏んづけたり…。こうして小さなゴンパに辿り着き、年配のお坊さん達に出会いました。色々お話していると一人のお坊さんから目が腫れているので薬がほしいと言われました。目薬を差し上げると「点し方がわからない」とお坊さん。そこで私がお坊さんの目に目薬を点してあげるととても喜んでくれ、そのなんともかわいらしい笑顔がたまりません。最後に一緒に写真を撮ってお別れしました。


良く実った麦畑

収穫するアルチ村の農民


「月世界」ラマユル


ラマユルゴンパの真下から

「月世界」と称される荒涼とした景色。黄色を帯びた土が侵食された山肌は独特な景観を作っています。こんな風景の中にラマユル・ゴンパがあります。普通は車でゴンパに向かいますが、この雄大な景色を堪能するため1時間ほど歩いて向かいます。みなさん口々に「この景色、すごい、すごい!」と連発していましたが、本当に素晴らしい景色でした。ゴンパは複雑な形に入り組んだ崖の上に作られていて、よくこんな山奥の崖の上にお寺を作ったものだと感心してしまいます。高台にあるゴンパからの景色も最高でした。


月の世界を歩きます。

見えてきたラマユルゴンパ



グル・リンポチェを
囲む人々
今回のツアーのメインイベントでもあるヘミス・ツェチュ。会場となるヘミス・ゴンパはラダック最大のドゥクパ・カギュ派のゴンパでラダック王国の最盛期だった17世紀に建てられました。ツェチュとは仏教をチベットに伝えた聖者パドマサムババを称えるお祭で、見所はお坊さん達が踊る仏教説話を再現する仮面舞踊です。まず、魂を揺さぶるチベットホルンが鳴り響きます。そして見るだけで解脱すると言われる有難いタンカがご開帳され、仮面舞踊が始まります。仮面舞踊の一番の見せ場はパドマサムババの八変化。パドマサムババの八つの分身を表す8人のお坊さんが仮面を被って出て来ます。会場は有難い踊りを見逃すまいと人の熱気に包まれます。仮面舞踊を見た後は本堂をお参りします。1年に1度のお祭りということで現地の人も沢山お参りしています。それはもうラッシュ時の満員電車さながらの人の多さで押せや押せやの大混雑!とにかく人の熱気に圧倒されました。



ヘミス・ツェチュのタンカ

グル・リンポチェの八変化

美しい壁画と雄大な景色、そして人の温かさ。ラダックがこんな素晴らしいところだとは、私の予想以上でした。風の旅行社でもまだまだご旅行されるお客様が少ないところですが、ラダックの魅力をもっと多くの方に知っていただきたい。そんな思いを胸に帰国しました。