
ポブジカのホームステイ先の客棟。食事や異文化体験は応相談!<ポブジカ>
ブータン旅行では、お寺や博物館を観光することも多いのですが、やはり「世界一幸福な国」を訪れて一番気になるのは「実際、ブータンの普通の人はどんな暮らしをしているのか?」「どんなことを考えているのか?」ではないでしょうか。そんな人々の暮らしを垣間見て、直接お話を伺うには、家庭訪問やホームステイが最適です。そこで、風の旅行社では、パロ、ポブジ谷、ブムタンなど各地で家庭訪問やホームステイをアレンジしています。
今回は、冬場にオグロヅルが飛来するポブジカ(ポブジ谷)にある「ソナムさんのお宅」をご紹介します。長男が高僧の転生=活仏で、母上であるソナムさんは村では「ユム」(母親を指す尊敬語)と呼ばれています。
いざ「オグロヅルの里」ポブジ谷へ
ポブジ谷はブータンを東西に貫く「国道1号線」を、ウォンディフォダンからトンサに向けて走り、ペレラ峠の少し西側で分岐点南下するとたどり着く広大な氷河谷です。世界的にも希少なオグロヅル(Black necked crane)が冬の間、越冬のためヒマラヤ山脈を飛び越えてやってくる地としても有名です。電気を引くために電柱を立てると、ヒマラヤを飛び越えてきたオグロヅルたちが引っかかって怪我をしてまうかも知れないと「電気を諦めてツルを取った」というエピソードとともに紹介されることが多いのですが、実際は、電柱を立てるより時間は掛かったものの電線の地下埋設工事によって村の電化は進みました。とは言え、この谷の人々がツルたちを大切にして共生していることは間違いありません。
素朴なポブジカの民家家でホームステイ

ようこそポブジカへ。ホームステイ先のファミリー<ポブジカ>
ホストファミリーであるソナムさんとそのご家族は、ポブジ谷の北側ガンテ村に住んでいます。オグロヅルの保護を目的に作られた王立自然保護協会(RSPN)のインフォメーションセンターからすぐ近くです。ガンテとは「山頂」という意味で、ポブジ谷の中央部に岬のようにせり出す小高い丘の頂上部に建つガンテ僧院を指します。広い谷のあちこちから仰ぎ見ることができる僧院は谷の象徴ともいえます。
家族構成は、ホストマザーのソナムさんを中心に
ホストマザー(ユム):ソナム・ユデン 44歳 活仏の母上であるソナムさんの敬称はアマではなく、ユム。
母: サンゲイ・ウォンモ 89歳
夫: カルマ・テンジン 40歳(フリーのドライバー)
四男: クンザン・テンジン 13歳(中学生)
ちなみに
長男: テルテン・ドゥルク・ダ・ドルジ 26歳 3歳のときに家の庭に埋まっていた経典(埋蔵経典=テルマ)を発見し、その後、高僧の生まれ変わりだと認められて、現在は寺院で修行中です。将来はブータンの宗教界を背負って立つことを期待されているくらいの高僧だそうです。
次男: シャチャ・テンジン 23歳 オーストラリアに留学中
三男: サンゲイ・ドゥルッパ 21歳 出家して僧侶に。2025年6月現在、ガンテ・ゴンパで修行中。
いつもおうちにいるのは四人ですが、繁忙期には親戚の人たちが手伝いに来ることがあります。
あと、おとなしいネコと、イヌがいます。
(年齢は2025年現在)
ソナムさんは、家の周りでジャガイモやカブの畑を耕し、暮らしています。以前は牛を飼っていたので、牛の囲いが残っています。元はガンテ僧院の僧侶だったという夫君のカルマさんは、還俗してソナムさんと結婚し、現在はフリーのドライバーとして働いていて、風の旅行社のお客様も何度もご案内しています。お婆ちゃんのサンゲイ・ウォンモさん以外は英語が話せます。もちろん、ガイドも同じ家に泊まるので、コミュニケーションで困ることはありません。
ただし、ブータン人にとっては「お客様に手伝いをさせるなんて失礼」という考え方がまだまだ一般的。自分から積極的に声をかけないと家族が働くのをボーっと眺めることになってしまいますので、家事を手伝いたいと思ったら、何でも声に出してみましょう。ジャガイモやカブの畑仕事、薪割り、料理など季節ごとに仕事はたくさんあります。
ソナムさんのお宅は築44年ほどの「the 伝統的な建築」です。谷に一本だけ走っている舗装道路沿いで、近所には同じような家が10-20軒くらい建ってます。家の周りはジャガイモとカブの畑。牛や馬が闊歩するのんびりした風景が広がります。家は幹線道路沿い(と言っても通る車はまばらですが)なので、荷物の搬入も楽チンです。

牛舎跡からポブジ谷を望む
2つあるゲストルームにはそれぞれ簡易ベッドやマットレスが2つずつあり、仏間にもマットレスを引いて3~4人泊まれるので一度に7-8人の宿泊が可能です。真冬のポブジ谷は寒さが厳しいのですが(とは言っても極寒ではなく12月~2月は最低気温がマイナス3~5度くらい)、ゲストルームには暖房(ヒーター)を入れてくれるし、毛布もしっかりあるので暖かく過ごすことができます。そして冬の朝はオグロヅルの鳴き声で目覚めることになります。(意外にうるさいです) 共同トイレは2つ(和式と洋式)あって、浄化槽へ紙ごと流す水洗式なので、全く臭くありません。

ポブジカの優しい光が入り込む

洋式の共同トイレ/シャワー

ファミリーやお手伝いの村人さんと食卓を囲む
立派な仏間
敬虔な仏教徒であるブータン人の家の中で一番大切な場所は仏間です。どの部屋よりも広く、中央に立派な仏像が置いてあります。部屋の壁にはたくさんの仏画(タンカ)が掛けられています。何か家で法事があればお坊さんがやってきて仏間でお経を唱えます。もちろん毎日のお祈りも欠かせません。
輪廻転生を信じるブータンでは、日本とは違い仏壇にご先祖を奉る習慣はないので「お化け」や「幽霊」とは無関係です。西ブータンでは男性のお客さんを泊める客間となることも多いので、部屋が足りないときは男性の皆さんは泊まることもあるでしょう。(*ちなみに東ブータンでは男女問わず客人は宿泊可のところもあるなど、地域、各家庭によっても習慣は異なります。)

ホームステイ先で拝見した立派な仏間<ポブジカ>

高僧の転生=活仏である長男の「猊座(げいざ)」

仏画(タンカ)
ホームステイ先で食べる ブータンの食事
ブータンの主食は日本と同じお米ですが、食感がややポソポソした赤米です。チーズやバターなどの乳製品、豚を中心とした肉類、そして唐辛子を煮たり炒めたりしたおかずと一緒に食べます。非常に辛いのが普通ですが、ホームステイの際は外国人用に調節してくれます。激辛に挑戦したい方は事前にお知らせ下さい。
おやつにバター茶とともにザウ、シップと言った日本のアラレのようなお茶菓子が出ることもあります。
ポブジカの食事はシンプルですが、普段着のブータンの食卓を体感できますよ。

ソウルフードのエマ・ダツィのほか野菜や肉の郷土料理が供されます。

鍋からお米やおかずを取って、お皿に盛りつけます。

ある日の朝食。シンプルだけどごはんがすすむ。
ブータンの食事事情についてはこちらもご覧下さい。
旅のヒント●ブータン料理 辛い? 辛くない?
石焼き風呂に挑戦!
水が豊富なブータンというお国柄ゆえか、ブータンの人はチベット系の民族としては例外的にお風呂好き。特にパロに住む人は毎日ではありませんが「ドツォ」と呼ばれる「石焼き風呂」に入る習慣があります。火の中にくべて熱く真っ赤になった石を次々に風呂に入れ、適温にしたお湯に入ります。石を焼く作業は意外と大変で、時期と天候によっては2~3時間かかることも。焼けた石で沸かしたお湯と、石を焼いてくれたお父さん(お婿さん)のやさしさで、体の芯からポカポカと温まります。重労働なので滞在中1回だけの体験でご勘弁ください。石焼風呂のない日は洗面器と沸かしたお湯を用意します。また強風や悪天候の場合は火を焚けないので実施できないこともあります。

右の2つの扉の奥がドツォ

屋外で焼いた石を浴槽につながる槽に入れてあつあつに
※現地事情によっては、石焼風呂がご用意できないことがあります。
※個人宅なのでタオルや石鹸などはご持参下さい。着替えを入れる袋やサンダルがあると便利です。
なぜ、ポブジカでホームステイなのか?
最大の理由はこのポブジカの環境が素晴らしいことです! ポブジカには電柱がありません。広い谷を見渡したとき人工的に造られた物が民家くらいしかなく、電線が邪魔をすることもありません。しかも、民家自体がとても少なく、わずかに耕された畑も、人々の暮らしが自然の中に溶け込んでいるように感じられ、本当に美しい風景なのです。
春はシャクナゲを初め花々が咲き乱れ、夏は緑の湿原が広がり、冬は枯れた湿原にはオグロヅルたちがやってきます。
ブータンのほかの地方と比べても「のどかだなあ」と思わずにいられません。そんな谷で自然と共存しながら暮らす人々のお宅に泊めていただく。こんなに贅沢なことはなかなかないでしょう。

ポブジカの集落。お天気がよいと、絵に描きたくなるような風景が広がる<ポブジカ>

ポブジカは広大な放牧地。牛や馬がお気に入りの場所で食事中<ポブジカ>
さらに、ポブジカでは、2011年から日本のJICAの委託を受けて日本環境教育フォーラム(JEEF)とブータンの王立自然保護協会(RSPN)が共同して、地元のコミュニティとともに「地域に根ざした持続可能な観光の開発プロジェクト」を進めました。(風の旅行社の代表である原優二もアドバイザーとして参画しました)
その一環としてJEEFとRSPNがホームステイの受け入れ方について指導し、ゲストのベッドルームやトイレの設備はもちろん、家を清潔に保つために掃除の仕方や、調理のの仕方、外国人の習慣とマナーなど観光客を受け入れるにはどうしたらいいのか、を村人たちに教えたのです。その結果、それまでほとんど外国人が訪れることがなかったポブジカに、何軒もホームステイの受け入れ先が現われました。ソナムさんたちもそのうちの1軒で、風の旅行社では彼らのお宅でホームステイを始めることにしたのです。
これまで外国人と接する機会の少なかった地域なので村人は素朴で伝統的な暮らしをしていますが、ゲストを受け入れる体制もしっかり整っています。ブータンの伝統的な田舎の生活を体験するにはピッタリの環境だといえるでしょう。しかも、ブータン唯一の国際空港のあるパロから1泊2日で来ることができるので、アクセスもよいのもお勧めポイントです。
また、地元の人たちも「自分達のことをもっと知ってもらおう」と積極的になり、自分達の文化に自信を持つようになってきたそうです。
ブータンにはいわゆる「観光地」は数えるほどしかありません。ブータンという国を知り、ブータンという国を楽しむには彼らの暮らしに入り込むのが一番です。あなたも昔ながらの暮らしを保ちつつ、自然と共存するポブジカでのホームステイで異文化体験をしてみませんか?
いかがでしょうか? ブータンの家庭で過ごしてみて、初めてブータンの人の感じる「幸せ」が見えてくるのかも知れません。
せっかくのブータン旅行、1、2泊だけでもホームステイで過ごしてみてはいかがでしょうか?
ブムタンだけでなく、ポブジカやパロでもホームステイが可能です。詳細はお問い合わせください。
【ご注意】ホームステイ先は多国籍の様々なお客様を同時に受け入れています。貸切ではありませんので宿泊日が重なる場合もございます。予めご了承ください。お部屋は別々になりますが、シャワー設備などは共同利用となります。
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ブータンの暮らしと祈りに触れる
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