総選挙が終わり・・・

キルティプルでも選挙活動中

キルティプルでも選挙活動中

先日3月5日にネパールでは下院の総選挙が行われ、ようやく選挙結果が詳細に判明してきています。

実は、その直前の2月27日から3月4日まで添乗業務でネパールに行ってきました。ネパールに着いた翌日の2月28日から、突然ネパール全土で酒類販売・提供の中止となり、3月1日から3日は全国で臨時の休日となりました。幸い、お客様はあまりお酒を飲まれる方たちではなかったので禁酒令の影響はほぼなく、旧市街の繁華街が休日前の買い物客でごった返していたり、選挙カーが騒がしかったり、レストランや博物館の臨時休業などはありましたが、逆にカトマンズ市内全体の交通量が激減し、どこに行くのも渋滞知らずで助かりました。

そして、我々が日本へ帰国した3月5日、ネパールでは無事に総選挙が行われ、結果はそれまで第4党だった新興の国民独立党(RSP)が275議席中182議席を獲得して圧勝しました。カトマンズ市長の職を辞してRSPから出馬したバレンドラ・シャハ氏が首相に選ばれる見通しです。「ラッパー市長」として、カトマンズの改革で成果を上げて有名になった若干35歳のバレンドラ氏には、若い世代だけでなく、国民の大きな期待がかかります。

焼き討ちにあったヒルトンホテル

焼き討ちにあったヒルトンホテル

昨年(2025年)9月にネパール政府は突如としてFacebook、Instagram、YouTube、Xなど主要なSNSを遮断しました。表向きは「サイバー犯罪対策」「未登録SNSの利用禁止」などでしたが、各種SNSを利用して拡大されていた政府批判へのあからさまな情報統制でした。この措置に対し、特に都市部の若者層(いわゆるGEN-Z:Z世代)が激しく反発し、大きなデモ行進を行いました。その後デモ隊と警察が衝突し、多くの(19人とも70人以上とも言われる)死者がでました。その後、責任を取って首相が辞任、SNSの遮断も中止され、暴動は沈静化するかに思われましたが、その後も国会議事堂や高級ホテルが焼き討ちにあい、政治家やその家族に対する暴力行為が発生し(しかも、のちに一部の被害者は別人だったと判明)、国際空港も閉鎖されるなど、一時はネパール全土が大混乱しました。その後、元最高裁長官が臨時首相に就任しZ世代の代表と話し合いを持ち、3月の総選挙を約束して、ようやく1週間ほどの混乱が収束しました。

※デモ、抗議活動の詳しい経緯はこちらの現地スタッフブログもご覧下さい

私も長年ネパールという国に関わっていますが、これほど激しい抗議行動は初めてです。いつもニコニコして穏やかなネパールの人々ですが、心の奥に強い感情を秘めているのだと思い知らされました。

この暴動や混乱の背景には長年にわたる政府の汚職、縁故主義と、若者の経済的な困窮などへの強い不満があります。特にネパールでは伝統的にブラフマーなど「高位のカースト」の出身者が政治・行政の中枢を占める傾向が強く、下位カーストの参入が難しい構造が続いてきました。当然、中枢を占める高位のカースト出身者の人々同士には血族や姻族も多く、互いに不正を隠し、利権構造が温存され、長い間維持されてきたと指摘されています。今回の選挙結果は、このカースト制度に基づいた政治体制に若者のみならず多くの国民がNOを突きつけ、カトマンズの市長として改革を進めた実績のある「ラッパー市長」に変革への期待を託したと、言われています

カトマンズの王宮広場でも選挙演説

カトマンズの王宮広場でも選挙演説

しかし、そんな新政権にも問題は山積みです。既存の「高位カースト」の政党は敗れたとはいえ、政権奪還を目指しています。また旧政権とともに汚職のホットスポットだった公務員などの官僚機構や軍隊、警察などは温存されたままです。彼らが新政権の政策に静かに抵抗する可能性が指摘されています。改革が頓挫すれば、次の選挙で旧勢力が巻き返してくる可能性も考えられます。

政治改革は一朝一夕にはできません。旧勢力や官僚機構、軍隊などもまずは新政府のお手並み拝見となるでしょうから、当面は政治的には安定していると思われます。しかし、官僚機構の「静かな抵抗」などが続くと彼らへの反発から国内が不安定化することも考えられます。また、改革の失敗による反動もあり得るでしょう。抵抗勢力を押さえつつ、着実に変化を起こすという、新政権には難しい舵取りが求められています。しかし、ネパールに関わる人間として、ネパールの人々がカーストの壁を越えて互いを尊重し、平和で豊かな、より良い国になることを願ってやみません。

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