ムスタン旅日記:4 洞窟探検

ムスタン旅日記:3 アムチとの邂逅 からのつづきです。
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朝食後、ローマンタンから、さらに北へ向かう。
長い陸路移動の疲れはあるものの、幸い体調の悪い方はいないようだ。
町外れを進むと立派なチョルテンと、チョルテンのような独特の形をした岩山を目にするようになる。
今朝、ローマンタンの町でみたように、ムスタン地方のチョルテンは屋根が付いているのが特徴なのだが、ここのチョルテンは屋根の部分がなくなっている。崩れてしまったのだろうか。

ローマンタンから中国・チベット自治区との国境はすぐそこだ。その距離わずかに20㎞ほど。
国境付近は中国からのトラックが行き交い、道路は圧倒的に綺麗に舗装されている、と聞いていたのだが、国境方面に向かう道が川の増水で渡れなくなっていた。ドライバーたちが川に入って水量を確認するが駄目なようだ。

増水して通れなくなった道

増水して通れなくなった道

残念ながら国境周辺の見学は諦めて地元では「ジョンケイブ(Jhong Cave)」と呼ばれる洞窟へ。巨大な一枚岩の岩山に小さな洞窟がポツポツとあり、まるで大きな砦のようだ。

お城のようなジョン・ケイブ

お城のようなジョン・ケイブ

その見た目から、Jhongは恐らくはチベット語の「ゾン=砦、城」が訛ったのではないかと思われる。
大きなコンクリート製の階段の上に洞窟の入り口がついており、中でアリの巣のように繋がっている。

ムスタン周辺には大小多くの天然の洞窟があり、大昔(およそ2000~1000年前?)には人間が人工的に広げて住居として利用してきたとされている。その後、建築技術が向上し住居としては利用されなくなったが、最近まで仏教の行者たちの瞑想窟として利用されていた。

風の旅行社の元ラサ駐在員で風カルチャークラブなどでお世話になっている人類学者の村上大輔さんによれば、ムスタンの洞窟は『チベットの精神文化を深く理解していくうえで重要な空間上の「特異点」となっているもので、いわばチベットの精神世界へ入っていくための鍵のようなもの』だそうだ。
確かにチベットではあちこちに「聖なる洞窟」があり、洞窟探検のような巡礼をしているし、ポタラ宮の地下には「シャンバラ」に続く抜け道が続いていると言う伝説もある。

狭い階段を登る 天井は煤で真っ黒だ

狭い階段を登る 天井は煤で真っ黒だ

洞窟の中 台所の跡か?

洞窟の中 台所の跡か?

入ってみると洞窟の中は意外に広く、煮炊きの後や、トイレなども残されている。
穴から外を見渡すと同じように穴の開いた岩山があちこちにあり、長年の風化で岩の柱のようになっている。
チベットの西部に広がる「土林」と言われる風景にそっくりだ。

洞窟の「窓」から見た下界の風景

洞窟の「窓」から見た下界の風景

洞窟探検は仏教に興味がなくても楽しめるが、標高が4,000m近くある上に、天井が低いので屈みながら動き回らないといけないので息が切れる。特に身体の大きな私は辛い。

20分ほど歩いて次の見学地ニプ・ゴンパへ移動する。
ニプとは「ニマ=太陽」「プク=洞窟」が縮まったもので、15世紀に、ムスタンの3代国王タシグン王の兄弟で「ローオケンチェン(ロー国の大和尚)」と呼ばれた名僧ソナムフントゥプが修行した洞窟を基にしたサキャ派(ゴル派)の僧院だ。

ニプ・ゴンパ

ニプ・ゴンパ 手前の建物が僧侶学校

岩壁に解けこんだような外観で、チベットの洞窟文化を象徴しているようだ。
現在は僧侶学校が併設されていて、沢山の小坊主が勉強していた。

勉強する小坊主たち

勉強する小坊主たち

仏教の教義以外にチベット語、ネパール語、英語も学んでいて、カグベニのお寺と同じように優秀な子供はインドのデラドゥンにあるサキャ派の総本山で修行するんだとか。こんなに中央から遠く離れた「僻地の中の僻地」のお寺でもしっかりと教育を施す、サキャ派の資金力と教育熱に、皆さん驚く。
その後、日本人は歓迎されていたのか、本堂の壁画や瞑想窟の写真は撮り放題の大サービスだった。

名僧ソナムフントゥプが修行した洞窟

名僧ソナムフントゥプが修行した洞窟

ニプ・ゴンパの古い壁画

ニプ・ゴンパの古い壁画

帰路、ローマンタンの街が一望できるポイントで写真タイム。
ムスタンの都であるローマンタンとはロー(南)国の「祈りの平原」と言う意味だが、
なるほど、周辺の荒涼とした岩山に対して、ローマンタン付近だけ木が生え、緑があり、そばの畑にはピンクの花が咲いていて、人々が暮らすには適した土地だと分かる。

ローマンタン遠景

ローマンタン遠景

続いてローマンタンと谷を挟んで向かい合うように建つナムギャル僧院へ向かう。
ナムギャル僧院は、ムスタン王国の創始者であるアングンサンポ王の息子タシグン王の創建と言われる僧院で、黄金の経典(金泥経=金でかかれたお経)があるとして有名だ。

到着すると昼時だったからか、沢山の小坊主たちがお出迎えしてくれた。
世話役っぽい若い英語のできるお坊さんが、歓迎の意を伝えてお寺の中を案内してくれたが、2015年のネパール大地震で本堂が大きく損壊して、大規模な再建工事が進められているとのことだった。現在はここで修行しているが寒さが厳しくなる秋と冬は、ポカラにあるお寺へ移動するんだとか。
案内が終わると世話役のお坊さんが「ご飯を食べていってくれ」としきりに誘う。しかし、ロッジでランチを食べる予定でオーダーしてしまっているので、後ろ髪を引かれながらもお断りする。

沢山の小坊主がお出迎え

沢山の小坊主がお出迎え

再建中のお堂

再建中のお堂

残念ながら、期待していた金泥経も、多くの寺宝と一緒に仕舞い込まれてしまって拝見できなかったのだが、お寺の再建を願ってお布施を少し奮発しておいた。

昼食の食器を洗う小坊主

昼食の食器を洗う小坊主

我々もお腹が減ったので、お寺をあとにローマンタンの町へ戻る。
午後は、いよいよ今回のメインイベント、ローマンタンの僧院見学。
しかし、我々の艱難辛苦はまだまだ続くのであった・・・。<その5につづく

行く手をさえぎるヤクの群

行く手をさえぎるヤクの群

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ネパール最奥に息づくチベット世界

ジープで行く 禁断の王国・ムスタン探訪10日間

出発日設定2020/10/17(土)~2020/11/14(土)
ご旅行代金568,000円
出発地東京・大阪・名古屋・福岡