ささげも良いが

ささげの胡麻和え、とはいっても、東京でお目にかかるあの丸くて細長い“いんげん”とは違い、幅が1cm程度のもので私の郷里でいう“ささげ”を使う。43年前に上京したころの東京には、この“ささげ”は滅多に売っていなかったのでがっかりしていたら、もうずいぶんに前になるが、“モロッコインゲン”が売られるようになって買ってみたら味はあの“ささげ”である。丸くて細長い“いんげん”に比べると肉厚で香りも強く美味いと私は思う。但し、豆が大きく育っていないものがいい。

“いんげん”と“ささげ”の違いを調べてみたら、似てはいるが違う植物で、ささげは細長くて1mくらいになるそうだ。一方、“いんげん”には、丸鞘いんげんと平鞘いんげんがあり、“モロッコインゲン”とは平鞘いんげんのことで、タキイ種苗が登録している商品名である。これを何故かは不明だが“ささげ”と誤称していたわけだ。しかし、関東や関西以外ではこれが一般的だそうだから、つまり、ささげ=平鞘いんげん=モロッコインゲンである。

それにしても何故モロッコなのか? “いんげん”は、江戸の初期に帰化した隠元法師が中国から持ち込んだといわれているが、モロッコインゲンは、タキイ種苗が昭和初期、当時流行っていた映画“モロッコ”にあやかって命名。なんともはや“いい加減”である。失礼、牧歌的である。昭和5年(1930年)は、まだアメリカ映画を日本で上映しても憚れない最後の穏やかな時間が流れていたに違いない。ちなみに、『カサブランカ』は、製作は戦中。日本上映は戦後である。

さて、話が長くなった。ささげの胡麻和えは、私の子供のころは、夕食の主菜。幅15㎝、縦10㎝ほどの四角い平皿に山盛りに盛られる。決して副菜ではない。これにみそ汁がつき、テーブルの真ん中に漬物やカボチャやナスの煮つけなどが大鉢に盛られている。ささげの胡麻和えが、翌日には、ウドやネギ、ナス、じゃがいもなどに代わる。これが定番の“茶色いごはん”。ご飯に麦がはいっていて、おかずが茶色。肉は週に一遍。これが我が家では、小学校を卒業するくらいまでは普通だった。

今は、ささげの胡麻和えには副菜に退いてもらっている。刺身か肉がつけば大満足だが、米は、今も我が家は麦が入っているから変わらない。あることで、子供のころを思い出した。体はタンパク質を欲する。日々に感謝である!

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