【バードウォッチングツアー添乗報告記】
6/7発 カナダ・ユーコン7日間

ツアー名:カナダ・ユーコン7日間【バードウォッチング】

2019年6月7日(金)~6月13日(木) 
文●ツアーガイド:大西 敏一 (おおにし・としかず)


今回は初めての極北カナダ・ユーコンのバードウォッチングの旅。この時期のカナダではバンクーバーなどの方が鳥は多いかもしれませんが、アルパインツンドラ周辺で繁殖鳥を探そうというもので、その他の野生動物も期待ができます。


 ユーコン バードウォッチング 1日目

皆さんとは成田で合流し、オーロラで有名なホワイトホースを目指します。経由地のバンクーバー空港ではヒメコバシガラスとシロカモメを見かけました。国内線を乗り継ぎ、ホワイトホースにはその日の夕刻に到着。空港では当地在住の動物写真家の上村さんが出迎えてくれました。彼がツアー期間中、ずっとサポートしてくれるので、安心してストレスフリーで探鳥をすることが出来ます。

空港はホワイトホースの街に隣接しているのでアクセスが良く、宿へも車ですぐでした。こちらは白夜のため、まだまだ日は高く、宿入りをすませた後でダウンタウン周辺の探鳥に出掛けました。普通なら夜探といったところです。ちょっとした林では餌運びに余念がないコマツグミ、樹頂で囀るキイロアメリカムシクイ、キヅタアメリカムシクイ、チャガシラヒメドリなどが目につきます。

キイロアメリカムシクイ(撮影:上山功夫氏)キイロアメリカムシクイ(撮影:上山功夫氏)

ユーコン川のほとりにある発電所周辺ではアメリカセグロカモメが営巣中で、キョクアジサシやコカモメ、シノリガモなどの姿もありました。

発電所の施設で営巣中のアメリカセグロカモメ発電所の施設で営巣中のアメリカセグロカモメ
コカモメコカモメ

川の所々で水上飛行機を見かけましたが、交通網が発達していないこの地では、足代わりに使われているとのことでした。

水上飛行機水上飛行機

20時には探鳥を終えましたが、白夜では延々と鳥見ができるので困ってしまいます。ユーコンでの最初の食事は、街のレストランにてこちらのスタイルのサンドイッチ&ハンバーガー。私はバッファロー肉のバーガーをいただきましたが、予想通り量が半端なかったです。

バッファロー肉のバーガーバッファロー肉のバーガー

 ユーコン バードウォッチング 2日目

ユーコン2日目の朝はユーコンカレッジ周辺から。トレイルコースを歩きながら、チャガシラヒメドリ、カオグロアメリカムシクイ、コマツグミなどを観察。

コマツグミコマツグミ

湿地ではミミカイツブリが抱卵中で、コカモメが採餌に現れると必死に攻撃を仕掛けていました。その他、ハゴロモガラスやビーバーなどをゆっくり観察。

ビーバービーバー

朝食後のマッキンタイヤ湿地では、何羽ものハクトウワシがとまる「ハクトウワシの木」を見に行きました。繁殖期にも関わらず、一本の木に成幼が入り混じってとまり、不思議な光景です。

ハクトウワシの木ハクトウワシの木

付近にはワタリガラスも多く、アメリカヤマセミやスミレミドリツバメなどもじっくりと観察できました。

アメリカヤマセミ(撮影:上山功夫氏)アメリカヤマセミ(撮影:上山功夫氏)

別の湿地では近距離でのハクトウワシの若鳥やアメリカイソシギ、アメリカセグロカモメ、アメリカミユビゲラ、チビメジロハエトリ、キタメジロハエトリなどを観察。シマリスがタンポポの種を食べるところも間近で見ることができました。

アメリカセグロカモメ(撮影:上山功夫氏)アメリカセグロカモメ(撮影:上山功夫氏)

ダウンタウンに戻り、昼食と買い物を済ませた後、再びマッキンタイヤ湿地へ。そこでハクトウワシの営巣を確認することができ、雌雄の交代シーンなどもバッチリと観察・撮影ができました。

巣内のハクトウワシのペア(撮影:上山功夫氏)巣内のハクトウワシのペア(撮影:上山功夫氏)

その他にアメリカコガモ、ニシモリタイランチョウ、ズグロアメリカムシクイなどが見られました。ジャクソンレイクではハシグロアビのペアがいて、雌が抱卵中です。獲物をつかんだハクトウワシを他の個体が追いかけて餌を奪おうとするシーンは迫力がありました。ウイルソンアメリカムシクイの囀る姿もなかなか良かったです。

マッキンタイヤ湿地。右手前はビーバーダムマッキンタイヤ湿地。右手前はビーバーダム

最後はフイッシュレイクへ移動。キョクアジサシのダイビングシーンやコキアシシギ、ミズカキチドリなどをゆっくり観察しました。本日のディナーはダウンタウンのレストランでステーキ&パスタ、ピザなどといただきました。

コキアシシギコキアシシギ
ミズカキチドリミズカキチドリ

 ユーコン バードウォッチング 3日目

3日目は早朝に出発。今日はアラスカハイウェイからクロンダイクハイウェイを南下し、ブリテッシュコロンビア州(BC州)まで足を伸ばします。

まずは上村さんが数日前にナキイスカを見たというウルフクリークキャンプ場へ。現地に到着してほどなく、トウヒの樹頂で独特の囀りを奏でる鳥が目に入りました。ナキイスカです! 今回皆さんが一番見たかった鳥でしょう。無事全員で観察し、撮影もできました。

ナキイスカ♂ナキイスカ♂

コーカツゥーンレイクでは木の上で囀るオオキアシシギやボナパルトカモメ(営巣中とのこと)、キタホオジロガモなどを。アニーレイクの湿地では営巣中のカナダガンやクビワキンクロ、キョクアジサシ、ボナパルトカモメ、コキアシシギ、ハゴロモガラスなどを観察しました。

キョクアジサシキョクアジサシ

ウィートン川沿いの崖でイヌワシの巣を発見しましたが、残念ながら今年は営巣していない様子でした。途中休憩したエメラルドレイクはその名の通り美しい湖で、正面にモンタナ山を望み、雪渓をバックに飛ぶカナダガンが素晴らしかったです。

小さな砂丘のあるカークロスデザートでユキヒメドリなどを見てからネアーズレイクへ。カナダガンの群れの中にコクガンが2羽いたのにはビックリしました。他にはコスズガモの群れ、ナキハクチョウ、ゴマフスズメ、サンショクツバメ、ミドリツバメ、ミヤマシトドなど。

ゴマフスズメゴマフスズメ
ミヤマシトド(撮影:上山功夫氏)ミヤマシトド(撮影:上山功夫氏)

ランチはカークロスの街のビストロでベーグルやバーガーを。こちらはほとんどがオーガニック食品。エコも徹底していて、プラスティック製のストローは無く、入れ物はもちろん紙袋です。日本も早くそうすれば良いのに、などと話しながら食べました。

カークロスは先住民族であるクリンギット族の村で、街中に彼らのトーテムポールが建っています。世界創世神話に出てくるワタリガラスは、彼らにとって文化的にも重要な鳥だそうです。一本の大木からノミ一つでくり抜き、削りながらカヌーを作り上げる技法を伝承している先住民族の男性に話を聞く機会もあり、彼らの文化にも触れることができました。

食後はベネットレイクの橋の下に営巣しているサンショクツバメのコロニーを観察。それから更に南下し、ボーブアイランドの駐車場で再びナキイスカを発見。雄2羽がよく囀っていました。BC州の州境付近では断崖絶壁にいる多数のマウンテンゴート(シロイワヤギ)を見つけ、スコープで観察することができました。この辺りに生息するのは亜種アラスカシロイワヤギでしょうか。

マウンテンゴート(シロイワヤギ)の親子マウンテンゴート(シロイワヤギ)の親子

その後、BC州をドライブし、カナダの税関付近のアルパインツンドラ地帯まで行きました。目の前には森林限界が広がり、すごい景色でした。夕食はコンラッドキャンプ場にてバーベキューディナー。たまたまキャンプに来ていた上村さんの知人からミカサダケを頂き、焚き火で料理をしながらバイソンソーセージなどと美味しくいただきました。

BC州のカナダ税関近くのアルパインツンドラBC州のカナダ税関近くのアルパインツンドラ

帰路でブラックベアーを見かけましたが、結構シャイな個体でした。ホテルには22時前に到着。今日の探鳥は16時間と長丁場だったのは白夜ならではですね。

 ユーコン バードウォッチング 4日目

4日目はアラスカハイウェイを西へドライブしながら、クルアニ国立公園を目指しての探鳥です。

早朝に食事を買い込んで出発。タキーニ川に掛かる橋の下ではサンショクツバメが営巣しているようで、巣から飛び出した個体が電線にずらっと並んでいました。クサワレイクやハイウェイ近くの湿地にはコキアシシギが多く、我々が観察していると成鳥が飛んできて梢にとまり警戒声を上げます。いかにも繁殖地に来た感いっぱいのシーンです。

ミカヅキシマアジを見ていると草際に動くものがいます。コキアシシギのヒナのようで、小さい体に長い足が印象的でした。

梢で鳴くコキアシシギ梢で鳴くコキアシシギ

朝食はタキーニ川キャンプ場で。駐車場脇にある昨年まで営巣していたアメリカワシミミズクの巣を見せて貰いましたが、いわゆる“テングス”の上に営巣していたようです。小さな体に似合わない大きな声で囀っているのは、ルビーキクイタダキです。アルパインツンドラの中で、コマツグミやチャガシラヒメドリ、アメリカムシクイ類の囀りを聞きながら飲むモーニングコーヒーはとても贅沢なひとときでした。買い込んだマフィンとクロワッサンもとても美味しかったです。

アラスカハイウェイアラスカハイウェイ

食後、メンデンホール湿地に行く途中で再びナキイスカを発見。湿地ではカオグロクイナがよく鳴いていますが、姿を見るのは難しそうです。アカエリヒレアシシギ、クビワキンクロ、ミカヅキシマアジ、サバンナシトドなどを観察していると1羽のシギが目の前に降りてきました。アメリカヒレアシシギの雄です。繁殖地の緯度はもっと低いはずなのにと北米のフィールドガイドを広げると、ユーコンにポツンと点が打たれてあります。それが丁度この辺りのようで、なかなかの出会いに感動しました。

アメリカヒレアシシギ雄(左)とアカエリヒレアシシギ雌アメリカヒレアシシギ雄(左)とアカエリヒレアシシギ雌

ヘインズジャンクション手前でトイレ休憩した際にホッキョクジリスを発見。みんなでじっくりと観察ができました。

ホッキョクジリス(撮影:上山功夫氏)ホッキョクジリス(撮影:上山功夫氏)

パインレイクではハクトウワシとミドリツバメの営巣を確認し、キタホオジロガモ、ヒメハジロ、ナキハクチョウなども見られました。

ミドリツバメミドリツバメ

その後はサルファレイクを経て、クルアニ国立公園沿いをドライブ。シープ・マウンテンでドールシープの親子を見ることができ、イヌワシのペアも観察しました。クルアニレイクでは夏羽のコオリガモや胸から腹が赤みを帯びたアメリカハヤブサ、ツバメ(北米亜種の体下面が赤いタイプは亜種の中で最も赤い)などを観察。

帰路は大型哺乳類の出現に期待しながらのドライブでしたが、アラスカハイウェイでグリズリーベアー1頭とブラックベアー2頭に出会えました。

グリズリーグリズリー
ブラックベアーブラックベアー

途中、ハイウェイ上に見事なダブルレインボーが掛かり、みなさん大感激。大撮影会に。夕食はヘインズジャンクションでカナダ風にアレンジされた中華料理でした。

アラスカハイウェイに架かるダブルレインボーアラスカハイウェイに架かるダブルレインボー

 ユーコン バードウォッチング 5日目

最終日はホワイトホース周辺での探鳥。朝から雨予報のため、今日はホテルで朝食を取り出発。参加者の方が朝の散歩時に、ユーコン川でウミアイサのヒナ連れを見かけたとのことでした。

コシグロクサシギ(撮影:上山功夫氏)コシグロクサシギ(撮影:上山功夫氏)

パディーズポンドで営巣中のアカエリカイツブリとコカモメ、コシグロクササギなどを見ていると上空で聞き慣れない声がします。声の主はディスプレイフライトをするタシギで、個人的にはカムチャツカ以来、久しぶりでした。尾羽を目一杯広げて降下する姿はオオジシギと一緒ですが、「フォフォフォ…」と控えめなディスプレイ音です。

抱卵中のアカエリカイツブリ抱卵中のアカエリカイツブリ

雨も上がったユーコン川沿いのマイルズ渓谷トレイルでは、ワタリガラスの幼鳥への給餌シーンやカナダカケス、アメリカヤマセミとその巣などを観察しました。

ダウンタウンへ昼の買い出しに向かう途中で道路脇にある人工巣塔に営巣したハクトウワシを観察。鳥との距離の近さに驚かされました。

人工巣塔で営巣中のハクトウワシ人工巣塔で営巣中のハクトウワシ

その後、ビジターセンターへ立ち寄り、上村さんのレクチャーで、今回訪れた探鳥地のおさらいをしました。

ランチはウルフクリークキャンプ場で。食事の最中にもナキイスカの声が聞こえます。トレイルを散策しての探鳥では2度ナキイスカが出現し、割と近い距離でペアを見ることができました。

ユキヒメドリユキヒメドリ

ユーコン川を望むスポットではオリーブチャツグミが囀っているのを発見し、ゆっくりと観察。

オリーブチャツグミ(撮影:上山功夫氏)オリーブチャツグミ(撮影:上山功夫氏)

その後のメアリーレイクではヒメウタスズメと激近のハシグロアビの撮影ができ、探鳥を締めくくることができました。

ハシグロアビ(撮影:上山功夫氏)ハシグロアビ(撮影:上山功夫氏)

ラストナイトの夕食はダウンタウンのレストランで。みなさんとシェアしながら鳥談義をしながら楽しくいただきました。

鳥合わせを終えて解散後に街へ出掛けた際、道路脇に佇むコヨーテを見かけました。ダウンタウンに現れたのは久しぶりとのことでした。

コヨーテコヨーテ

今回観察されたのは76種とそれほど多くはないですが、繁殖地ならではのシーンが満載でした。美しいロケーションと環境の中で、先住民の文化にも触れながら鳥とその他の野生動物も楽しめる点がユーコンの良さでしょう。

渡りの季節では種類、個体数とももっと多く観察されるとの事なので、来年は春の渡りを狙って再び訪れたいと考えています。


【今回確認できた鳥達】


カナダガン、ナキハクチョウ、アメリカヒドリ、マガモ、ミカヅキシマアジ、ハシビロガモ、アメリカコガモ、クビワキンクロ、スズガモ、コスズガモ、シノリガモ、コオリガモ、ヒメハジロ、キタホオジロガモ、(アメリカ)カワアイサ、ウミアイサ、ハシグロアビ、ミミカイツブリ、アカエリカイツブリ、ハクトウワシ、イヌワシ、カオグロクイナ、ミズカキチドリ、アメリカイソシギ、コシグロクサシギ、オオキアシシギ、コキアシシギ、アメリカタシギ、アメリカヒレアシシギ、アカエリヒレアシシギ、ボナパルトカモメ、(コ)カモメ、(アメリカ)セグロカモメ、シロカモメ、キョクアジサシ、アメリカヤマセミ、アメリカミユビゲラ、ハシボソキツツキ、(アメリカ)ハヤブサ、ニシモリタイランチョウ、キタメジロハエトリ、チビメジロハエトリ、カナダカケス、カササギ、ヒメコバシガラス、ワタリガラス、ミドリツバメ、スミレミドリツバメ、ショウドウツバメ、サンショクツバメ、ツバメ、アメリカコガラ、カナダコガラ、ルビーキクイタダキ、オリーブチャツグミ、コマツグミ、ムナオビツグミ、イエスズメ、カオグロアメリカムシクイ、キイロアメリカムシクイ、ズグロアメリカムシクイ、キヅタアメリカムシクイ、ウイルソンアメリカムシクイ、チャガシラヒメドリ、サバンナシトド、ゴマフスズメ、ヒメウタスズメ、ミヤマシトド、ユキヒメドリ、ハゴロモガラス、クロムクドリモドキ、ナキイスカ、マツノキヒワ


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出発地東京・大阪・名古屋
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