【開講記】東京湾岸あるき 陸から海から今むかし
「二つの市場をゆく」(豊洲編)

●講座名:東京湾岸あるき 陸から海から今むかし「二つの市場をゆく~豊洲と築地~」
●開講日:2019年11月30日(土)

11月の最後の週末、東京湾岸埋め立て地一帯の天気は快晴。絶好の講座日和です。
波乱の市場移転から1年経った豊洲、そして築地の今を確かめようと、13名のご参加者が集まりました。
講師は、長年築地に通い、豊洲移転後も現場で働く人々の声を拾い続けている眞鍋さん&鴇田さんです。

眞鍋さん

眞鍋さん眞鍋じゅんこ:東京湾の漁師町を訪ね続けるフリーライター / 鴇田康則:写真家
日本中の村や離島を訪ね記録し続けている。面白いことや人を見つけると、じっとしていられない。東京・千葉・神奈川にまたがる東京湾をくまなく取材し、たくさんの面白いことや場所、人を見つけた。眞鍋じゅんこ著・鴇田康則写真として、多くの著作を世に出している。


まず、豊洲へ

朝からまさかの「天どん」でスタート!

今回はオプショナルツアーとして、ご希望者のみを連れて「朝食に天どんを食べる」というプランを立てたろころ、なんと半数以上のお客様から参加表明をいただきました。ご参加者の並々ならぬ「やる気」を感じつつ、朝9時、ゆりかもめ線市場前駅を出発。駅前は観光客で大賑わいでした。

真新しいビル内の飲食店舗エリアには、屋号に覚えのある店舗が並んでいます。
私たちがお邪魔したのは「天ぷら 愛養」さん。
もともと築地では仲卸業者の人たちで賑わっていた喫茶店が、豊洲では天ぷら屋として新しいスタートを切ったという面白い経歴を持ちながら、味は老舗の味を受け継いでいるお店です。
暖簾をくぐるとスタッフの鈴木さんが笑顔で出迎えてくださいました。もとは喫茶店にいらした方と分かり、その物腰の柔らかさに納得。対照的に寡黙に手を動かしていた大将からは、老舗天ぷら店時代から現在の愛養の天ぷらについてお話を伺うことができ、真摯な語り口が印象に残りました。

太白ごま油を用いた良質な油と、甘すぎないたれ。みなさんペロリと平らげてしまったことには驚きです。
冬は「牡蠣の天ぷら」がおすすめとのことですので、ご興味を持った方はぜひ足をお運びください!


愛養の鈴木さん(左)にお話を伺いながら天どんをいただく

大将曰く、もたれないのは良い油、甘すぎないたれのおかげとのこと

“まっすぐには歩けない” 豊洲・水産仲卸売場棟へ

朝10時、いよいよ全員集合。講師の眞鍋さん&鴇田さんと私を含めると16名、(風カルチャークラブとしては)大所帯となりました。先頭は眞鍋さん、殿(しんがり)は鴇田さん。はぐれないよう気をつけながら移動します。

今回我々が見学したのはおもに「水産仲卸売場棟」。もちろん巨大な豊洲市場の一部でしかありません。
セリ場ややっちゃ場(青物市場)など見所はたくさんありますが、この講座は講師と参加者の「好奇心」が原動力。まっすぐには歩くことができません。
しかも、午後は築地へ移動する予定のため、講師おすすめのスポットに絞って見学しました。

「水産仲卸売場棟」の中だけでも、何度も立ち止まり、寄り道しながら、眞鍋さんの顔馴染みのお店や仲卸業者の方のお話を聞いて歩きます。
そのおかげで、普通ではまず聞けない・見ることができないことが立て続けに続くのですが、これは講座ならではのお楽しみ。
猛烈にご紹介したい気持ちでいっぱいなのですが、ここでは割愛させていただきます・・・。
(まさにここが、眞鍋さん&鴇田さん講座の醍醐味なので、ぜひ講座にご参加ください!)


いざ、水産仲卸売場へ!

豊洲では、水産仲卸売場をガラス越しに眺めるだけで、一般客は立ち入りできない。(その他の写真は講座参加時のお楽しみ!)

プロ御用達の道具と食品 「魚がし横丁」

また、市場には水産、青果だけでなく、業界御用達のプロの道具(乾物、包丁、白衣、長靴、etc…)が揃う「魚がし横丁」(物販エリア)があるのですが、ここがまた、面白い。
山本海苔店」では、海苔の試食をいただいたのですが、海苔の産地で、旨味と食感がここまで違う、ということに皆、驚かされました。有明産の海苔は、たしかに複雑な味を感じられて旨いのです。口の中にすうっと馴染むほど溶けやすいので、おにぎりには不向きなのだとか。料理によって海苔の産地を変えるとは・・・通ぶって知り合いに教えたくなってしまいます。


築地時代から顔なじみの山本海苔店さん
産地による海苔の違いについて解説していただきました。

乾物秋山さんでは、高品質の乾物を割安に買い求めることができます


眞鍋さんが愛用する長靴「伊藤ウロコ」の伊藤嘉奈子さんからも、熱い長靴トークを伺うことができました。
こちらの長靴の逆三角マーク、見たことがある方は多いと思います。
ウロコは魚の鱗ではなく、龍神様の鱗であり、それを逆にした状態のロゴマークとのことです。
後から気がつきましたが、「逆鱗に触れる」という慣用句がありますよね。うーん、もっとお話が聞きたくなりました。


伊藤ウロコのスタッフさんが、天然ゴム製の長靴について教えてくれました

眞鍋さんも、漁港や船の上でも大活躍!動きやすい!と太鼓判


プロの道具や食品が、小売販売店よりもお得な値段で手に入るので、こういったお店に一般客も出入りしやすくなったことは豊洲移転による大きなメリットかもしれません。
お客様の中には、すでに買い物袋がパンパンの方も・・・。(まだ、築地が残っています!)

まだまだ豊洲を見たいところはありますが、今日は築地も歩く欲張り講座。
先を急ぐ一行は、都バスで埋立地を横断し、「築地」へと向かったのでした。(「後編・築地編」に続く)