緊急事態宣言が全国的に解除された10月の初旬。天気に恵まれたこの日、平日にもかかわらず高尾駅から小仏行きのバスは大勢の登山客で定員の2倍は乗っているのではないかという超満員でした。
日影バス停でぎゅうぎゅう詰めのバスから解放され、ドッと降りた登山客がぐんぐん山を登りだす中、我々一行はのんびりと観察開始です。
先ず、山下先生が見つけたのが「ツリフネソウ」と「キツリフネソウ」のコンビです。
ツリフネソウは学名がインパチェンス=我慢できない(英語ではtouch me not)というそうです。語源は触ると莢がはじけて中の種が飛び散るから。実際に触ると種がぱちーんと飛び散り、空っぽになった莢がクルリと丸くなりなかなか楽しい。小さなお子さんがいたら大喜びしそうです。
そんな話をしているうちに、先ほどまで近くにいた登山客たちは一人残らずいなくなってしまいましたが、ブラジャーのような形の豆果が付くフジカンゾウ、スコットランドの国花でもあるアズマヤマアザミ、試験管ブラシのようなサラシナショウマ、イヌショウマ、租庸調の「調」として納めた布を織るのに利用したカラムシ(そこから現在の調布などの地名が付いたそうです)、などをちょっと歩いては解説を繰り返して、バス停からすぐ近くのキャンプ場につくまで40分もかかりました。文字通りの「植物観察」講座ですが、山下先生のお話は植物だけに限らず、歴史や地理など雑学的な情報も多く、皆さん「あー、なるほど」と声が上がります。
ここからは「いろはの森コース」を登りながらの観察になります。
葉が牛の額のような形のミゾソバ、紫色の花が大量に咲くアキノタムラソウ(秋の多紫草)などを見ながら進むと、いよいよ山道へ。稜線に生えるモミや、カヤなどの針葉樹も現れます。葉に触ると痛いのがカヤ、痛くないのがイヌガヤだそうです。
1000㎞以上も海を越えて渡ることで有名な蝶アサギマダラの幼虫が餌にするキジョラン(鬼女蘭)は有毒で枝を折ると白い液体が出ます。この時期、高尾山ではたくさんの旅立ち前のアサギマダラを見かけます。
4号路に合流したところで、お昼休憩。標高700m前後で現れるイヌブナを確認。山頂はもうすぐです。
お天気に恵まれたので山頂付近はかなりの人で、すでに紅葉も進んでいました。
古語で赤くなることを「もみず・もみづ、もみじる」などというそうで、黄色くなるのがカエデ、赤くなるのが紅葉なんだそうです。(うっかりしてたら紅葉の写真を撮っていませんでした)
最後はケーブルカー乗り場で高尾山名物の天狗焼きを食べて解散しました。
5月には春編もあります。
山下裕先生と行く奥武蔵の植物観察 裏高尾で植物観察~春編~