
美しいザンスカール リジン村の風景
ヒマラヤに囲まれた「信仰の里」ザンスカール
ラダックから南西方向にザンスカール山脈を隔てた地にザンスカールは位置しています。冬は厳しい寒さに峠が閉ざされ、短い夏の間しか外部と接触できないその暮らしのためか、信仰の深いチベット文化圏の中でも特に篤い信仰で知られています。タイムカプセルに残されたように、昔ながらの生活や寺院の古い壁画などが大切に扱われ、壮大で美しい景観を背景に巨大な僧院がたたずんでいます。近年、北のセンゲラ峠越え、南のヒマチャルプラデッシュ州から道路が開通し多くの観光客が訪れるようになりましたが、まだまだ「古き良き」伝統的な暮らしが垣間見える地域です。
目次
ザンスカールの主な見どころ
ザンスカールの中心地 パドゥム

パドゥムの街
北のランドゥム地区から流れてくるストド河、南のルンナク地区から流れてくるツェラプ川の合流点に広がるザンスカール平野。その中心地がパドゥムの街。ストド河沿いにカルギル方面からの道路と、ルンナク方面からの道、そしてザンラ方面に延びる道路がが交わる重要なジャンクションでもあります。とは言っても人口は2,000人程度の小さな集落で2本の幹線道路が交わる交差点付近に商店や食堂などが数軒集まっている程度。
仏教徒のラダック人以外にカシミール人、バルティなどのムスリムの住人も多く、17世紀のラダック・チベット戦争の際、ムガル帝国(アウラングゼーブ帝時代)の援軍がそのまま残ったカチェという人々(スンニ派)も住んでいる。街はずれには8世紀ごろに岩に刻まれた五智如来(ギャワリンガ)の摩崖仏が残されている。
カルシャ・ゴンパ

ザンスカール最大の僧院、カルシャ・ゴンパ
ザンスカール地方最大のゴンパ(ゲルク派)。山の中腹の急峻な崖に本堂、僧坊が点在している様は圧巻です。寺からは背後にそびえるザンスカールの山々をバックにパドゥムの街が俯瞰でき、非常に景色がよい。壁画のレベルも高く、ザンスカールを代表する名刹です。現在は100名ほどの僧侶が修行しています。夏にはグストルというお祭が開かれます。

カルシャ・グストル
チュージグザル尼寺

十一面観音菩薩
カルシャ・ゴンパの西の谷を挟んだ反対の崖にある十一面観音菩薩(チュージグザル)像が本尊の尼寺です。別名は「トゥジチェンポ・ラカン」。「ロツァワ(訳経官)」の名で知られる高僧リンチェン・サンポの創建とホームステイ先のリジン村から1時間ほどで歩いて行けるのでピクニックにお勧めです。運が良いと人懐っこい尼さんが「お茶でも飲んでいきな」ともてなしてくれます。

休憩中の尼さん
サニゴンパ

サニゴンパ
ラダック・ザンスカールで最も古い歴史を持つゴンパと言われています。2-3世紀にカニシカ王が建てたとも言われるカニカ・チョルテンが基になったとされる。グル・リンポチェやカギュ派の開祖の一人ナーローパが訪れて瞑想したと伝えられています。平地にある回廊型のお堂で鍵蕃がいるだけでお坊さんはいません。

サニのお堂の中
ストンデゴンパ(ゲルク派)

ストンデのお勤めの様子
とにかくお寺からの眺めが素晴らしいのでそれだけでも訪れる価値のあるお寺。もともとカギュ派の始祖の一人マルパが開いたお寺ですが現在はゲルク派。日本語のできるお坊さんがいてフレンドリーにお茶に誘われることが多い。

ストンデからはザンスカールの谷が見渡せます
ザンラ王城跡と王族のお宅

ザンラ王のお宅から
ザンスカールの2つの王家の1つザンラ系の王様の領地で、比較的大きな村。ザンラの村には王族の住むお宅があり一部はホームステイ先として営業している。家の中庭には広場がありお祭りの日には仮面舞踏が披露される。2階にある仏間には年代物の仏像やタンカが収められていて歴史を感じさせてくれます。数年前に先代のザンラ王が亡くなり、跡を継いだ30代の若い王様は近くのザンラ王城跡を修復中。王城跡にはこの地で世界初の英蔵辞書を作ったハンガリー人チベット学者アレクサンダー・チョーマ・ド・ケーレスの暮らした部屋も残されています。
農村ホームステイ

リジン村から見下ろすザンスカールの谷谷
カルシャ・ゴンパの西側にあるいくつかの小さな村の一つリジン村はフランス人写真家のオリビエ・フォルミも長期滞在したほど美しい村。5つの集落が集まった村で、遠くから見ると羽を広げた蝶の形をしていると言われています。風の旅行社の現地ガイドを長年務めるスタンジンの実家のある村です。

リジン村のホームステイの快適なお部屋
標高は3,800mほどで、ザンスカールの谷の北側の斜面に位置していて、南側のパドゥムの街や、プクタルゴンパのあるルンナク地方への谷が見渡せます。快適なお部屋、美味しい家庭料理、素敵なご家族との時間が楽しめるホームステイがおすすめです。

暖かいご家族がお出迎え
関連ツアー
ザンスカール出身日本語ガイド・スタンジンと行く
周辺の見どころ<プクタル・ゴンパ、ゴンポ・ランジュン>
プクタルゴンパ

トルコブルー色に輝くツァラブ川とプクタル・ゴンパ
ザンスカール観光の目玉といっても過言でないくらいインパクトのあるビジュアルを誇る僧院。巨大な洞窟をもとに作られたお寺で、ご本尊の真上に聖なる木が生えている。
かつてはパドゥムからすべて徒歩でしか行くことができなかったが、徐々に車道が延長されm2024年現在近くのチャー村、プルネ村から片道1時間から2時間のハイキングで行くことができる。お寺の手前にあるゲストハウスでは食事も宿泊も可能。ここからさらに奥にトレッキングルートが続いている。
ランジュン・ゴンポ

聖山ゴンポ・ランジュン
最奥の僧院 プクタル・ゴンパ巡礼トレック
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地理とアクセス

ラダック&ザンスカール地図
カルギル経由
全長約450㎞(レー~カルギル220㎞、カルギル~パドゥム230㎞)
もっともポピュラーな幹線ルートですが通常カルギルなどで1泊して2日で通行する。
カルギル~パドゥム間もかなり舗装されましたが、毎年土砂崩れを繰り返していて道路工事でダート通行があるので230㎞の走行に6時間以上かかることもざら。最近は真冬でも除雪をして利用できるらしいが、大雪が降ればしばらく通れなくなるリスクは高い。カルギルからランドゥム間はイスラム圏で、道中の美しい景色も楽しめる。
センゲラ峠経由
全長約300㎞。2019年に開通したショートカットの新ルート。もともとはトレッキングルートだった道の舗装化を進めています。完全に舗装されたわけではないが、四駆でなくても通行可能。ラマユル・ゴンパの手前でワンラ方面に幹線道路を離れてシルシルラ峠と標高5,000mのセンゲラ峠を超えるダイナミックな絶景が楽しめるルート。
ヒマチャル・プラデシュ州から
ヒマチャル・プラデシュ(HP)州のマナリ、ダルチャ方面からセンゴラ峠を超えてカルギャク川、ルンナク川沿いにパドゥムまで車両が通行できる道が開通しました。部分的に舗装工事中だが大部分はきれいな道。両側を切り立った岩山に囲まれ美しい風景。かつてはトレッキングや馬のキャラバンでしかいけなかったため、川沿いには半農半牧の家畜とともに暮らす伝統的な生活をする村が残されている。
チャダル・トレック
かつては真冬の一時期のみ完全凍結した氷の川の上を歩いたトレッキングルート。
この川沿いのルートに道路工事が進行中。
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関連よみもの
第9話 ザンスカールへの道[LADAKH]
第10話 ザンスカールを行く2 <続き>
第11話 ザンスカールを行く3 <続き>
第12話 ザンスカールを行く4
第13回 ザンスカール人に聞くザンスカールの魅力