
ジョカン寺前で五体投地を繰り返す
ラサはチベット語で「神々の土地」の意。高層ビルが立ち並び、車が頻繁に行きかうなど、都市化の波が押し寄せているラサは、映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」のイメージとは程遠くなっていますが、今もなお巡礼者をひきつける聖地なのです。ジョカン寺やポタラ宮、そしてバルコル(八角街)の周囲に散在する小さなお宮や仏教各宗派の分院など、ラサにはお寺や僧院が密集しています。聖なる日やお祭りの日には、ラサ人だけでなくチベット文化圏いたるところから、(ある人は国境を越えて)、ラサに巡礼に訪れます。今でもラサでは、バルコルや巡礼路で五体投地をするチベット人たちに、深い信仰心を感じることができるでしょう。
天空の宮殿・ポタラ宮

ポタラ宮と巡礼者(冬)
チベット仏教、チベット世界の象徴ともいえる天空の大宮殿。ポタラとは「観音菩薩の住う地」、つまり主であり観音菩薩の化身でもあるダライラマ法王の宮殿という意味で、その存在自体がチベット人の信仰の対象となっているのです。 『俗』を表す白宮と、『聖』を表す紅宮の絶妙のコントラスト。迷路のような通 路や階段。増築を繰り返していたにもかかわらず均整のとれた、見応えある一大建築物です。(※内部の観光は1時間以内に限られ、写真撮影は禁止。液体物の持ち込みも禁止だが売店で購入可能)
チベットで最も聖なる寺・ジョカン(大昭寺)

陽が落ちてもジョカン前の巡礼者は途切れません
俗称は、本尊の釈迦牟尼像(ジョウォ)を祠るお堂(ラカン)を縮めてジョカン。寺院本来の名はトゥルナン寺という。本尊のチベットで最も聖なる釈迦牟尼像は、7世紀にチベットを統一した吐蕃王ソンツェン・ガムポの王妃・文成公主が唐から嫁入りする際にもたらされたと言われています。今も寺の入り口では、敬虔な仏教徒が朝から五体投地を繰り返しています。
巡礼路・バルコル(八角街、八廓街)

バルコルからのポタラ宮
ジョカン寺の周囲はチベット仏教徒憧れの巡礼路。毎日散歩がてら巡礼する地元の人や、五体投地で進む田舎から来た巡礼者、ビデオカメラ片手の観光客まで、皆で時計廻り。1日中人の流れが絶えません。特に朝と晩は巡礼の人通りが多くなります。

冬・人ごみのバルコル
ダライ・ラマの夏の離宮・ノルブリンカ

ダライ・ラマ14世の離宮タクテン・ミギュル・ポタン
歴代のダライ・ラマが建てたいくつもの離宮があり、夏の離宮として使われました。メインの見所はダライ・ラマ14世が実際に生活していたタクテン・ミギュル・ポタン。ダライ・ラマ14世はここからインドへ亡命しました。ノルブとは宝、リンカとは公園のこと。現在は博物館兼公園で、休日や祝日には多くのチベット人で賑わいます。ショトゥン祭にはアチェ・ラモ(チベット・オペラ)が上演されます。

ノルブリンカで出会った巡礼者
河口慧海や多田等観も学んだ・セラ寺

セラ寺の問答
ラサの北にあるゲルク派の大僧院で、1419年ツォンカパの弟子によって建てられました。僧侶たちが修行のひとつである「問答」をする姿を見学できる寺としても有名。約100年前、河口慧海や多田等観もこの学院に学んでいます。ショトゥン祭には大タンカが掲げられ、地元のチベット人や巡礼者で賑わいます。寺の境内をぐるりと囲む巡礼路があり、ラサの街やポタラ宮が遠望できます。

サンゲ・ドゥング

サンゲドゥングの摩崖仏
ポタラ宮の屋上から右手に見えるチャクポリ(薬王山)の丘。その裏手にはサンゲ・ドゥングと呼ばれる巨大な岩に掘り込まれた大量の磨崖仏や、経文が彫られた大量の石(マニ石)が整然と積み上げられたマニ塚があります。この摩崖仏はその昔、死者を弔うため(死者がより良い来世に生まれ変われるように)のタンカや仏像が用意できない庶民のために、とある貴族が寄進したそうです。ラサを一周する巡礼路「リンコル」の一部にあたりラサへの巡礼者だけでなく、地元の巡礼者も大勢訪れる聖地です。


ラサ市内概略図
ゲルク派の総本山・ガンデン寺

ガンデン寺の巡礼路からの絶景
ラサから東へ50km。ラサの名刹ガンデン寺は4,200mの小高い丘に鎮座しています。文化大革命で徹底的な破壊を受けましたが、徐々に復旧が進み現在は数百人の僧侶が修行しています。お寺の周囲には1時間ほどで回れる巡礼路がついており、7~8月にはブルーポピーを始め高山植物が美しく咲き乱れ、フラワートレックが楽しめます。毎年夏にはセタン祭が行われ、本堂内に貴重なシルクのタンカが、境内に巨大なタンカが掲げられます。

ガンデン・セタン祭で開帳される巨大タンカ
トルコ石の湖・ヤムドク湖

冬のヤムドク湖とノジンカンサン峰
標高4,441mチベット4大聖湖の1つヤムドク湖は、「天女が舞い降りその姿を変えた」といわれています。ラサを離れヤルンツァンポを渡り、羊やヤクが放牧される九十九折りの道を上り詰めると、標高4,749mのカンパラ峠の眼下にはエメラルドグリーンの湖が広がります。初夏には草原が広がりブルーポピーなどの高山植物がここそこで花を咲かせます。
ダムシュンの大草原と天空の湖ナムツォ
琵琶湖の3倍もあるという海のようなナムツォ湖。チベット語で「天の湖」の意で、その名の通り標高4,718mもの高所にあります。湖面は青く光り、湖の周りに美しい草原が広がる景勝地ですが、いまでも行者が湖畔で修行している聖地でもあります。大自然のスケールの大きさにチベットの信仰心の源泉まで感じ取ってしまう、そんな風景が広がっています。観光シーズンは6~9月です。

ナムツォ湖に向かう道中にあり、青蔵鉄道の停車駅もあるダムシュンはラサから僅か160kmですが、そこは写真集や写真展で見るチベットのイメージそのままの大草原が広がり、遊牧民がヤクや羊を放牧しています。
夏の楽園 ダムシュンの大草原と天空の湖ナムツォ
【旅のヒント】おいしいトコ取り! 青蔵鉄道「ちょい乗り」のススメ

ラサ郊外地図