ネパール復興支援・視察報告 ~震災から半年が過ぎて~

ネパール復興支援・視察報告

2015年11月17日
風の旅行社 代表取締役 原 優二


ネパールの本格的な旅行シーズンは、雨季が明ける9月後半から始まる。抜けるような蒼空に綺麗に映えるヒマラヤの峰々が、トレッキング客はもちろんあらゆる観光客を堪能させてくれる。今年は、例年以上に期待が大きかった。4.25ネパール大地震の影響で、夏の間は観光客が激減してしまったからだ。シーズンが到来すれば、ヒマラヤが観光客を誘ってくれるに違いない。ネパールの震災からの復興は、直接的な資金援助も必要だが、兎にも角にも観光客如何である。観光の復活なくしてネパールの復興もない。

4.25ネパール大地震直後の4月28日に開設した「ネパール支援金専用口座」には、合計8,416,192円という予想を遥かに越える金額が寄せられた(紙面で恐縮ですが、改めて感謝申し上げます)。弊社は、当初は「① 緊急支援(被災直後の食料、衣類、テント、作業用具など)、② 震源近くのパトレ村の復興支援③ 被災した子供たちの就学支援」という3つを基本に支援を始めた。しかし、支援を始めてみるとNEPAL KAZE TRAVEL(NKT)の知人や関係者から支援要請が次々とあがって来た。そこで、NKTのスタッフが実際に訪ねてその内容を確認した上で、以下の団体や村に支援することにした。

④ Federation of Swayambhu Management and Conservation(FSMC)
スワヤンブナートでの復興ボランティア
スワヤンブナートでの復興ボランティア
世界遺産の仏教寺院スワヤンブナートで日ごろプジャ(お祈り)を行っている在野のお坊さんたちのグループであり、寄付で寺院の修復を行っている。彼らは僧の格好をしてはいないが、彼らこそがこのスワヤンブナートを守ってきたと言っても過言ではない。この団体が8月に行ったスワヤンブナート寺院の瓦礫撤去のボランティアツアーを実施してくれた。


⑤ KVPT(Kathmandu Valley Presevaition Trust)
KVPTによって修復された飾り窓
KVPTによって修復された飾り窓
パタンを中心に寺院等の歴史的な建造物の修復を行っている国際NGO。様々な国、団体、個人からの援助で活動している。ひとつの修復プロジェクトに10年から15年程度の期間をかけて取り組み、常時30箇所ほどの修復を行っている。実際に、修復現場や修復したものを見せてもらったが、一旅行者がいくらガイドつきで見学しても到底気がつかない細かな部分を、昔の写真や絵などを参考に修復している。


⑥ コカナ村
コカナ村で作業するNKTスタッフ達
コカナ村で作業するNKTスタッフ達
カトマンズから一時間弱。田舎の農村風景をたたえた綺麗な村。震災直前にもヒマラヤを舞台にした日本映画のロケに使われた程、古い建物が多く立ち並んでいた。震災後は、小学校の先生を中心に支援受け入れ団体を結成し活動している。弊社のボランティアツアーの受け入れも行ってくれた。


⑦ サクー村
サクーの村人に支援物資を手渡す
サクーの村人に支援物資を手渡す
カトマンズから2時間ほどの古い村であり、かつてチベットのラサとカトマンズを結ぶ交易路の宿場町として栄えた。ツアーでは、ナガルコットから農村の暮らしぶりを見ながらのハイキングで訪れる場所だ。震災で大きな被害を受けたが、現在、支援受け入れ団体結成準備中。結成後、支援開始予定。




これらの団体とは、私が8月9日からネパールを訪れた際に会い、直接支援金も渡してきた。また、今後、ネパール支援を継続的に行うには、TAX問題などをクリアするために、支援金受け入れのためのNGOの設立が必要になった。そこでNKTのメンバーを中心にNGO「Maitri Foundation Nepal」を8月に発足させた。Maitriの意味はUniversal Friendだ。

現在のところ支援金の65%程を使った。使い方が遅いというご批判もあろうが、「復興支援は長期間にわたる。一遍に大金を渡すのはよくない。復興の状況や、受け入れ団体の活動状況を見ながら少しずつ渡そう」。これも、今回、私たちが学んだことだ。今後、上記の団体、特にパトレ村の復興支援を重点的に行っていく計画である。


ダルバール広場を視察する原優二
ダルバール広場を視察する原優二
NKTスタッフ達と作業を手伝う
NKTスタッフ達と作業を手伝う




9月20日、ネパールのヤダブ大統領(当時)が新憲法を公布した。王政の廃止後、新憲法公布まで7年間も掛かったが、これで、震災からの復興に弾みがつくと期待した。ところが、隣国のインドがその内容に異議を唱え、インドからのガソリンやプロパンガスが入って来なくなってしまった。NKTでは、なんとか燃料を確保しツアーを実施しているが、燃料が足りず、閉めてしまったレストランやホテルもある。残念だが、折角戻りかけた観光客にまたブレーキが掛かった状態である。

弊社では、8月、9月には、復興支援ボランティアツアーで15人の方にご参加いただいた。今は、兎に角、普段どおりのトレッキングや観光ツアーに一人でも多くの方に行って欲しい。それこそが、復興に繋がる。